第45話

 朝の魔王城。


 庭には薄茶色の髪を風になびかせたリリアが、元気いっぱいに飛び回っている。

「おはよう、みんな!」


 骨たちはカタカタと揃って返事をする。

「お嬢様、おはようございます」

「今日も元気ね……」


 誰もが笑顔でその姿を見守る中、谷の方から慎重に足音が近づく。

 シオンだ。


 昨夜から魔王城の外で夜を過ごし、朝一番で近くの様子を確認しに来たのだった。

「……ここが、魔王城……か」


 警戒心を保ちつつも、リリアの姿に目を奪われる。


 リリアは気づくと、ぴょんと飛んで近づいてきた。

「おはよう! あなた、昨日の子だよね?」


「……あ、ああ」

 シオンは少し戸惑いながらも、顔を赤らめる。

「わあ、ここの魔法って本当に面白いね!」


 リリアは元気に庭の魔法の玉を跳ねさせ、シオンに見せる。

「うわっ! ちょ、ちょっと危ない!」


 シオンは慌てて手を出すが、玉はふわりと空中で止まり、リリアは笑いながら小さく頭を傾けた。


「だいじょうぶだよ! 魔法だから、痛くならないの!」

「……そ、そうか」


 少しずつ緊張が解けるシオン。


 庭での小さなトラブルは、二人の距離を縮めるきっかけになった。


 骨たちは遠くから静かに見守る

「お嬢様……本当に、新しいお友達ができましたね」


「うん! シオン、すごく面白いよ!」

 リリアの無邪気な笑顔に、シオンも思わず笑みを返す。


「……面白い、か」

 普段は警戒心を抱くシオンだが、リリアの存在には少しずつ心を許し始めていた。


 昼になり、リリアはシオンに簡単な魔法を教えてみることにした。

「ほら、こうやって手を動かすの!」

「……こう?」

 シオンは真剣な顔で手を動かす。


 光の玉が少しだけ跳ねると、リリアは拍手して喜ぶ。

「やったね! すごいすごい!」


「……ありがとう」

 小さなやり取りでも、胸が高鳴る瞬間がそこにはあった。


 骨たちも、楽しそうにカタカタ笑う。

「お嬢様、今日はまた一段と元気ですね」


「うん! シオンと一緒だからね!」

 リリアは無邪気に言った。

 シオンの心は、少しずつ、この魔王城の温かさとリリアの笑顔に染まっていくのだった。

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