第40話

 洞窟を抜け、魔王は王国に向かう。


 空は暗く、風も重く感じられた。


 その全身から放たれる威圧に、王国の大地はすでに震え始めているようだった。

「……リリアを……」


 低くつぶやく声には怒りが満ち、同時に、深い溺愛が混じる。


 魔王がまず目指したのは、リリアが捕らわれ、辱めを受けていた建物――アリアの牢だった。


 扉を踏み破ると、そこで繰り広げられていた光景に、魔王の怒りは頂点に達する。

「……何をした……!」


 赤黒い瞳が燃え、空気が震え、兵士や監視者は思わず膝をつくしかなかった。


 リリアは小さな体を震わせながらも、魔王の到来で少し安堵の色を見せる。

「お父様……!」


 その声で魔王の怒りは一層激しく燃え、牢の扉も壁も兵士も、威圧だけで圧倒される。


 骨たちがリリアのもとに駆け寄る。

「お嬢様!」


 小さな体を抱きしめると、魔王の手も加わり、強く、柔らかく少女を包む。

「……もう大丈夫だ、耐えたな……」


 困り眉を寄せつつも、その瞳には溢れる愛情が滲む。


 2年間の屈辱と酷使は、ここでようやく終わったのだった。


 リリアを安全な場所に移すと、魔王は次に王や母親たちへ向かう準備を整える。


 怒りはまだ収まらず、骨たちも、その背後に従いながら、静かに覚悟を決める。

「……あいつらの慢心、思い知らせる時が来たな」


 魔王の歩みは重く、しかしその一歩一歩が、王国全体に恐怖を刻みつける。


 リリアは骨たちの腕の中で小さく息を整え、安心したように微笑む。

「……お父様とみんながいるから、もう怖くない……」


 その言葉だけで、魔王の心はさらに柔らかくなると同時に、怒りは燃え上がったままだった。

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