第35話
薄暗い部屋の壁に、リリアの小さな影が揺れていた。
手足には魔力封印の装置が巻かれ、光も魔法も使えない。
「……お父様……みんな……」
小さな声で呟くが、返事はない。
王国側は、リリアの容姿や存在を権力と利益の道具として利用していた。
他の子ではできない精密作業や、王国の貴族たちの目を満たすための作業――
少女は心の中で必死に抵抗しながらも、無力化された状態ではどうすることもできない。
「……こんな、こと……」
小さな手で顔を覆い、涙をこらえる。
光も魔法も封じられ、体も心も自由にならない。
ただ、無力な自分が、他者の思惑の中で操られるしかない現実が、彼女を押しつぶす。
昼も夜も、命令は続く。
王国側は、リリアの可愛らしい容姿や柔らかい表情を見せることで、外の権力者や生活維持のために利用する。
それは言葉にはされないが、少女には屈辱と恐怖として伝わる。
「……お父様……みんな……」
心の奥で、魔王やみんなとの日々を思い出す。
あの時の温かさが、今の苦しみと絶望をより際立たせる。
夜、薄暗い牢の中で、リリアは小さく身を丸める。
体は疲れ切り、心は押しつぶされそうだ。
けれど、5歳の頃の無邪気な光景――光を操って笑った日々――が、僅かな希望として胸の奥に残っていた。
「……ここで負けたら、全部終わり……」
小さな声で自分を励ましながら、リリアは耐え続ける。
無力でも、心だけは折れない。
それが、王国側の計画に抗うための、たったひとつの力だった。
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