第33話

 薄暗い部屋の壁に、小さな影が映っている。


 リリアは膝を抱えて座り、魔力封印の装置の重みを感じながら、冷たい床に体を押し付ける。


「……お父様……みんな……」

 呟く声はかすかに震え、返事をする者はいない。


 部屋の外では、王国側の兵士たちが計画通りの動きを続けていた。


 光や魔法が使えないリリアは、毎日の雑務と過酷な作業に従うしかなかった。

 朝は、重い荷物を運ぶ作業から始まる。


「もっと早く、しっかり運べ!」

 命令の声に、小さな体は必死で応える。


 腕や足は疲労で重く、痛みが全身に走る。


 昼には、精神的な圧迫が待っている。


 王国の計画者たちは、リリアに冷たい言葉を投げつけ、屈辱を与える。

「お前の力を出せなければ、国のためにはならないのだぞ」


 その声にリリアは小さく身をすくめる。

「う……はい……」


 魔力が封じられている今、何も反論できない。


 ただ、目の奥の光だけが、ほんの少し揺れている。


 夜になると、薄暗い牢で疲れ果てた体を休める。

 しかし安らぐことはない。


 王国側は、少女の存在を生活や権力維持に利用しており、次の日にはまた過酷な作業が待っている。


 5歳の頃の無邪気な感覚は、心の奥でわずかに残る光として、リリアを支えていた。

「……お父様、みんな……」


 夜の静寂の中、彼女は小さく呟き、目を閉じる。


 そして、光を操れない無力な自分でも、生き抜く力だけは捨てずに、少しずつ耐えていく決意を固めていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る