第32話

 薄暗い部屋に、リリアはひとり座っていた。


 手足には魔力を封じる装置が巻かれ、光も魔法も自由に使えない。

「……お父様……みんな……」


 小さな声でつぶやくが、誰も答えは返さない。


 ただ、ひんやりした壁と床、冷たい鉄格子だけが目に映った。


 5歳の頃、城で笑いながら光を操っていたあの日々が、遠い夢のように思える。

 王国側の人間たちは、少女の魔力を使って国の財政や権力を支えることに必死だった。


 光も魔法も封じられたリリアは、日々の作業に従うしかなかった。


 重い荷物を運ばされ、掃除や細かい雑務に追われ、さらに言葉の暴力や屈辱を受ける。

「……どうして、私……」


 小さな胸の奥で、心は泣きたくても泣けない。


 しかし、幼い頃の無垢な感覚が、かすかに残っていた。

 それだけが、彼女を支える小さな光だった。


 日々の時間はゆっくりと、しかし確実にリリアの心と体を蝕んでいく。


 朝から晩まで続く作業、休む間もなく命令される。


 王国側は、少女の体力と精神を限界まで利用しながら、外の世界での地位と生活を維持していた。


 月日は流れ、リリアは10歳の少女として、心も体も少しずつ疲弊していった。

「……いつか、お父様が……」


 小さな手で顔を覆いながら、涙をこらえる。


 それは、魔力を封じられた無力な少女が、絶望の中で希望を捨てずに生き続ける、初めの一歩だった。

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