第25話

「……外の者よ、よく聞け」


 その声に、勇者は一瞬足を止める。

 赤黒い瞳の威圧感、城全体に満ちる圧――


 リリアはまだ笑顔で紙を浮かべているのに、その圧だけで勇者は体が硬直した。


 リリアは何も意識していないまま、紙を指先で弾く。

「わーい、もっと飛べー!」


 紙や小石が軽く跳ね、勇者の足元に散る。


 勇者は慌てて踏みとどまるが、全力で押さえられる魔力の波に顔が青ざめる。


 骨たちはカタカタ笑いながらも、必死で守る。

「お嬢様……やはり危険です!」

「でも楽しそう……!」


 魔王は静かに歩み出し、肩越しにリリアを見つめる。

「……これが、規格外の力だ」


 赤黒い瞳から放たれる圧は、城内のすべての骨たちを静止させる。


 勇者は一歩も動けず、汗が額を伝う。

「……くっ……! この……!」


 城門を踏み越えた瞬間、ざわめきが一気に消え、全ての圧力が勇者に押し寄せた。


 リリアは首をかしげ、紙をくるくる回すだけ。

「ふふーん、まだ遊んでるだけなのにねー」


 骨たちはカタカタ笑い、魔王は眉間に皺を寄せつつも、どこか困り顔で見つめる。

「……これでも序の口だ。油断するな」


 勇者は城の中で立ち尽くし、圧倒的力の前に完全に戦意を削がれた。


 リリアは何も知らず、天真爛漫な笑顔で紙の弟と遊び続ける。

 無邪気な笑顔、無自覚チートの力、そして魔王の静かな圧――


 骨たちのカタカタ笑いと、空中の紙や小石の舞い。


 魔王の困り眉と微妙に楽しげな顔。

 魔王城の平和な混乱は、今日も静かに、しかし圧倒的に支配されている。

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