第23話

 中庭に朝の光が差し込む。


 リリアは小さな手で宙の紙を押さえ、指先で光を操る。

「ふふーん、今日はこうしてみようかな」


 8歳になったリリアは、少し話し方が落ち着いてきて、口調も以前より少し丁寧になった。


 それでも瞳の輝きは変わらず、天真爛漫な笑顔を絶やさない。


 骨たちは周囲で、紙の弟や小石を支えながらカタカタと笑う。

「お嬢様、成長しても無邪気さは健在ですね」

「でも、少し言葉遣いが……」


 魔王は遠くから、赤黒い瞳でリリアを見守る。

「……少し大人びてきたが、やはり油断ならん」


 リリアは紙の弟をふわりと浮かべ、軽く回転させる。

「わー、もっと飛べー!」


 骨たちは慌てて手を伸ばし、カタカタ笑いながらも必死でキャッチ。

「お嬢様……城中が遊園地状態です!」

「でも楽しそう……!」


 魔王は眉間に皺を寄せつつ、微妙に困った表情。

「……相変わらず規格外だ」


 中庭の端で、魔王は静かに手をかざし、防御結界を確認する。

「念のため、今日も防御は全開だな」


 リリアはそれに気づかず、笑顔で紙を浮かせ続ける。


 骨たちは、結界に守られつつも緊張と笑いの入り混じった表情。

「お嬢様を守るのも一苦労です……」

「でも楽しそう……」


 その時、城の遠くの門がわずかに揺れた。

「……来たか」


 魔王の声は低く、重く、そして少しだけ微かに緊張を帯びる。


 骨たちも同時に気づき、カタカタと少しざわつく。

「……誰か来ましたか?」

「……外界の者です」


 リリアは、まだ無邪気に紙の弟を浮かせ、光を跳ねさせながら遊ぶ。

「わーい、もっと飛ばそーっと!」


 魔王は赤黒い瞳を細め、指先で微かに防御結界を整える。

「……少し動きがある。そろそろ見せる時が来たか」


 骨たちは少し緊張しながらも、カタカタ笑いを止められず、今日も騒がしい朝が続く。


 そして、この無邪気な笑顔と遊びの先に、世界を揺るがす勇者の到来が控えていることを、誰もまだ知らなかった。

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