第21話
朝の魔王城。
リリアは今日も無邪気に中庭で遊んでいた。
小さな紙の人物を宙に浮かべ、手元の光を指先で弾く。
「きゃははー! もっと飛べー!」
骨たちは慌てて追いかける。
「お嬢様! もう少し落ち着いて!」
「でも楽しそう……!」
「いや、危険です!」
しかし、昨日の防御結界は、リリアの想像力と無自覚チートにはもう追いつかない。
紙の人物が突然光を放ち、舞い上がる小石や砂が中庭の隅々まで飛び散った。
骨たちは思わずカタカタと声を上げる。
「お嬢様……制御が……!」
「でも楽しそう……!」
「いや、どうにかしてください!」
魔王は、ゆっくりと歩み寄る。
赤黒い瞳がリリアの行動を追い、眉間に深く皺を寄せる。
「……これは、完全に遊びの範囲を超えている」
指先を動かすだけで、空中の光や小石が静かに止まる。
「……防御、全開」
骨たちは少し安心するが、まだ小さな紙の人物がぴょんぴょん跳ねている。
リリアは首をかしげる。
「えー? 止まっちゃったの?」
「そうだな……遊んでいるつもりでも、危険になりかけている」
魔王は眉間の皺を深くしながらも、微妙に困り顔で続ける。
骨たちは、カタカタ笑いながらも結界を補助する。
「お嬢様、これ以上は城全体が……!」
「でも楽しそう……!」
その時、遠くの王国で小さな変化があった。
王国の人々は、かつて「無才能」と判断されたリリアの存在を思い出すことはまだない。
だが、勇者たちが討伐の準備を進め始め、王国の一部で魔王城の存在が現実味を帯びてきたのだ。
魔王はその情報を感じ取り、眉間にさらに皺を寄せる。
「……そろそろ、外界の動きにも注意が必要か」
リリアはそんなことには気づかず、紙の弟をさらに飛ばす。
「わーい! もっと飛べー!」
骨たちは飛び交う紙と光に巻き込まれ、カタカタと大慌て。
「お嬢様……城中が遊園地状態です!」
「でも楽しそう……!」
魔王は深いため息をつきつつ、指先で防御結界をさらに強化する。
「……油断ならん……」
しかし、その防御結界の中でも、リリアの笑顔は絶え間なく輝き、城の平和を壊すどころか、魔王城の全員を巻き込んだ「ほのぼの混乱」を作り出していた。
そして、魔王の瞳には、遠くの王国で動き始めた勇者や外界の存在が微かに映り込み、これまでの日常が、やがて世界を巻き込む大事件の序章となることを予感させた。
リリアの笑い声と紙の飛ぶ音。
骨たちのカタカタ笑い。
魔王の困り眉と、微妙に緊張した空気。
魔王城の平和は、今日も賑やかに続く。
しかし、世界の波紋は、すぐそこまで迫っていた。
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