第20話

 中庭では、リリアが小さな紙を宙に浮かせ、弟を想像して遊んでいた。


「ふふーん、こうやったらもっと面白くなるかなー!」

 指先で紙をくるくる回しながら、光を足したり、小石を浮かせたりする。


 骨たちは慌てて後ろからついていき、カタカタと笑いながら紙を支える。

「お嬢様! もう少し落ち着いて!」

「でも楽しそう……!」

「いや、危険です!」


 リリアは無邪気に手をぱちぱちと鳴らす。


 すると小石や紙の人物が弾けるように宙に飛び、時折壁にぶつかりそうになる。


 骨たちは必死にキャッチするが、カタカタ笑いを止められない。

「……もう城が遊園地に見える!」

「お嬢様の笑顔は罪ですね」


 その光景を遠くで眺める魔王。


 赤黒い瞳は紙と小石を追うが、眉間には少し皺が寄る。

「……平和だが、油断ならん」


 彼の体格と威圧感に、誰もが戦々恐々としていたが、リリアの遊びには完全に振り回される。


 それでも手を出さずに見守っていた。


 リリアがふわっと手を振ると、空気が軽く揺れ、宙の紙が突然加速して大きく跳ねた。


「きゃははー!」

 骨たちは驚きと笑いの混ざった声をあげ、慌てて紙を捕まえようとする。


「危ないです! お嬢様!」

「でも、楽しそう……!」

「いや、落ち着け……」


 魔王は眉をひそめ、ゆっくりと歩み寄る。

「……制御が必要だな」


 骨たちは一瞬、息を飲む。

「制御……魔王様、まさか……」

「いや、でも……」


 リリアは無邪気に気づかず、さらに紙を跳ねさせる。


 その瞬間、光の一部が大きく拡散し、中庭の小さな石や砂が舞い上がった。

 骨たちは思わずカタカタ声を上げる。


「お嬢様……制御不能です!」

「でも楽しそう……!」

「いや、どうにかしてください!」


 魔王は、静かに手をかざすと、空中に漂う紙と石をふわりと止めた。

「……これ以上は危険だ」


 リリアは目を丸くする。

「え? 止まっちゃった?」


「……お前の遊びは度を超えている」

 魔王の低くて重い声に、リリアはちょっと不思議そうに首をかしげる。


「でも、楽しいよ?」

 魔王はため息をつき、指先で微かに光を触れながら、防御の結界を作り出した。


「……これで、飛びすぎても誰も怪我はしない」

 骨たちはほっと息をつき、カタカタ笑いながらも守りに入る。


「お嬢様を守るのも一仕事です……」

「でも楽しそう……」


 リリアは小首を傾げ、ふわりと笑った。

「ふふーん、でもまだ遊べるね!」


 魔王は目を細めつつ、微妙に困り顔で腕を組む。

「……油断すると、城中が遊園地になるな」


 骨たちはまたカタカタ笑い、リリアの無邪気さと才能に振り回されながらも、一緒に日常を楽しんだ。


 中庭の光の中、紙の弟はゆっくり回転し、石はふわりと浮かび、魔王の防御結界が静かに守る。

 こうして、今日も魔王城の平和な混乱は続くのだった。

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