第17話

「ねえ、お父様!」

リリアは、廊下の角から飛び出して魔王に声をかけた。


「ここって、どこまで続いてるの?」

魔王は、腕を組んで静かに見つめる。


「……端まで行けば、分かるだろう」

声は低いが、どこか苦笑にも似た困惑が混じっていた。


骨たちは、即座に後ろに続く。

「お嬢様、走らないで!」

「床が滑りやすいです!」

「壁の角に頭をぶつけます!」


リリアは笑いながら軽く手を振る。

「大丈夫だよー! ちょっとだけ走るだけ!」


そして、ぴょんと前に跳ねた。


廊下を駆け抜けるリリア

手を伸ばして壁の絵画に触れたり、柱の隙間を覗き込んだり。


骨たちは慌てて後を追う。

「危ないです!」

「いや、可愛いから許します!」

「いや、許していいのかそれ!」


魔王は、腕を組んだまま追うこともせず、静かに眺める。

「……元気すぎる」


少し眉をひそめつつも、声は出さない。


中庭に出ると、リリアは大きく深呼吸。

「わー! お外って、気持ちいいね!」


骨たちは、思わず口々にツッコミを入れる。

「屋外です! 外じゃありません!」

「気持ちいいのは分かりますけど!」

「五歳のくせに元気すぎです!」


リリアは、無邪気に笑う。

「だって、遊ばなきゃもったいないじゃん!」


その笑顔に、魔王は目を細める。

「……ああ、確かに元気だな」


ふと、リリアは小さな石を拾った。

「お父様、これ飛ばしてみる?」

「……?」

「うん、魔法でね!」


リリアは無邪気に手をかざすだけ。

空気がふわっと動き、小石はふわりと宙に浮く。


「きゃはは!」

リリアの笑い声と、浮かぶ小石。


骨たちは、思わず背筋が伸びる。

「え、何これ……!」

「危険です!」

「でも楽しそう……!」


魔王は、赤黒い瞳で指先の小石を追いながら、無言で頭を抱える。

「……これも、規格外か」


リリアは、満足そうに手を下ろす。

「ふふーん、楽しかった!」


「じゃあ、つぎはあっちの庭も見てみよっか!」

骨たちは、カタカタ笑いながら頷く。


「今日も一日、無事では済まなそうです」

「でも、楽しそうだから許すしかないですね」

魔王は、ため息混じりに小さく呟く。


「……こうして城の中は、平和なのか、混乱なのか……」

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