第16話

「ねえ、ねえ!」

 リリアは、書斎の奥で跳ねながら叫んだ。


「魔法って、どうやって使うの?」

 骨たちは、一瞬固まる。


「……触るだけでも危険ですよ?」

「それに、彼女は……」

「……規格外です」


 魔王は、眉を寄せながら後ろで見ていた。

「……止めろとは言わんが、油断するな」


 リリアは、手をぱたぱたと振る。

「遊びながらやってみたいの!」


 骨たちは、カタカタ笑いながらも、全神経を集中。


「破壊されるのは、城ではなく資料です!」

「気をつけろ!」

「見守るしかありません!」


 リリアは、軽く息を吐きながら。

「じゃあ、ちょっとだけね」


 手をかざすだけ。


 それだけなのに。


 ――ぱちっ。

 小さな火花が指先に光った。


「わぁ!」

 リリアは、目を輝かせる。


「できた!」

 骨たちは一斉に飛び上がる。


「お、お嬢様……!」

「初めてでこの威力!?」

「制御してます!? 本当に!?」


 魔王は、息を飲んだ。

「……規格外だ」


 視線は、赤黒く光る指先に固定された。


 リリアは、さらに楽しそうに手を振る。

「じゃあ、こうやるとどうなるのかなー?」


 ――空気が、ぷわっと流れた。

 小さな風が巻き起こり、紙や本がひらひらと舞う。


「きゃー!」

「本が飛んでます!」

「巻物が、巻きついてます!」


 骨たちは、必死に手を伸ばし、紙類を押さえようとする。

「でも楽しそうです!」

「やっぱり無自覚チート……」


 リリアは、まったく気にせず。

「ふふふ、つぎはこっちかなー?」


 小さな手で光を集め、ピカッと光らせる。

 魔王は、ついにその場に一歩前進。


「……制御されている……のか?」

 赤黒い瞳が、真剣に指先を追う。


 骨たちは、カタカタ笑いながら。

「本当に制御してますね!」

「むしろ安心しました!」

「いや、危険すぎます!」


 リリアは、ぽんと手を下ろす。

「つかれたー!」


 肩をすくめ、にぱっと笑う。


 魔王は、頭を抱える。

「……五歳にして、規格外か」


 でも、声は少しだけ、柔らかくなった。


 骨たちは、地面に座り込む。

「本日の実験、終了です!」

「安全は、魔王が保証しました!」

「……いや、保証してないです!」


 リリアは、無邪気に言った。

「じゃあ、つぎはお散歩しよー!」


 その言葉に、魔王は少し困った顔で首を傾げた。

 魔王城の日常は。


 こうして、天真爛漫で無自覚チートなリリィと、

 それを見守る魔王と骨たちによって、

 今日も静かに、そして賑やかに続いていく。

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