第13話
「ねえねえ!」
リリアは、中庭のど真ん中で元気よく手を上げた。
「きょうは、なにしてあそぶの?」
骨たちは、少し考える。
「昨日は派手でしたからね」
「今日は、平和なのがいいですね」
「かくれんぼとか……」
その言葉に。
リリアの目が、きらっと輝いた。
「かくれんぼ! やる!」
即答だった。
魔王は、嫌な予感がしていた。
だが、口に出す前に。
「では、鬼は――」
「わたしがやる!」
骨たちは、一斉に固まる。
「……鬼、ですか」
「探す側ですね」
「……見つけたら、どうします?」
「んー」
リリアは、少し考えて。
「さがす!」
それだけだった。
魔王は、腕を組む。
「……制限を設けろ」
「はい!」
「見つけるだけです!」
「攻撃は禁止です!」
リリアは、聞いていない。
「もういいかーい!」
元気な声が、城に響く。
骨たちは、慌てて散らばった。
柱の裏。
階段の下。
天井付近。
「……もういいよー!」
リリアは、くるっと振り返る。
「じゃあ……」
目を閉じて。
少しだけ、集中する。
「――ここ!」
指を指した方向。
「!?」
「なんで分かるんです!?」
「気配だけで!?」
一人、即座に見つかった。
「つぎ!」
リリアは、楽しそうだ。
「……えいっ」
軽く、手を振る。
空気が、すっと流れる。
「きゃー!?」
「引っ張られてます!?」
「優しくしてください!」
隠れていた骨が、ずるずると引きずり出された。
魔王「……だから制限を」
「つぎ!」
リリアは、止まらない。
結果。
五分も経たずに、全員見つかった。
「すごい!」
「圧倒的勝利!」
「鬼が強すぎます!」
リリアは、満足そうに胸を張る。
「たのしかった!」
魔王は、深くため息をついた。
「……次は、鬼ごっこだな」
その言葉に。
骨たちが凍る。
「ま、魔王様……?」
「それは……」
「……走るだけだ」
念を押すように言う。
リリアは、きょとんとした後。
ぱあっと笑った。
「じゃあ、お父様もいっしょ!」
その一言で。
魔王の動きが、止まった。
「……私も?」
「うん!」
魔王城が、ざわついた。
「歴史的瞬間です」
「魔王様が鬼ごっこ」
「語り継がれます」
魔王は、しばらく黙り込み。
そして。
「……一度だけだ」
そう答えた。
鬼ごっこは、予想通りだった。
リリアは、走る。
速くはない。
けれど、楽しそう。
転びそうになって。
それでも、笑う。
魔王は、歩く。
走らない。
それでも、距離は縮まる。
「つかまっちゃう!」
リリアが、きゃっと声を上げる。
その瞬間。
無意識に、空気を蹴った。
「……あ」
リリアの体が、ふわっと浮く。
「とんだ!」
本人は、嬉しそうだ。
魔王「……」
骨たち「……」
魔王は、即座に魔力で支える。
落ちないように。
怖がらせないように。
「……飛ぶな」
低く、注意する。
「えへへ、ごめんなさい」
反省しているのか、怪しい。
地面に降ろされて。
リリアは、満足そうに言った。
「また、あそぼうね!」
それは、命令のようでもあり。
お願いのようでもあった。
魔王は、少しだけ困った顔をして。
「……考えておく」
骨たちは、心の中で叫んだ。
(もう否定しなくなってる……!)
魔王城の日常は。
今日も、平和で。
周囲だけが、必死だった。
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