第11話
魔力量測定をしよう。
それは、朝食の後に突然決まった。
「測ります!」
「測りましょう!」
「人間の子は測るものです!」
骨たちが、やけに張り切っている。
リリアは、首をかしげた。
「……それ、なに?」
「才能が分かります!」
「将来が見えます!」
「ワクワクします!」
最後の一言は、完全に骨の趣味だった。
魔王は、少し離れた位置で腕を組む。
「……無理にする必要はない」
「大丈夫です!」
「安全です!」
「壊れても予備があります!」
最後の発言が、不穏だった。
測定器は、水晶の球だった。
骨が両手で抱えるほどの大きさ。
表面には、細かな魔法陣が刻まれている。
「触ってください!」
リリアは、言われた通りに手を伸ばす。
小さな手が、水晶に触れた。
一瞬。
空気が、震えた。
「……?」
リリアは、何も感じない。
ただ、少しひんやりしただけ。
水晶は――沈黙したままだった。
「……あれ?」
「……表示が」
「……出ませんね」
骨たちが、ざわつく。
「故障ですか?」
「昨日は動いてましたよ?」
「昨日は骨でした!」
比較対象がおかしい。
魔王の視線が、水晶に向く。
その赤黒い瞳が、細められた。
「……もう一度だ」
骨たちは、慌てて測定器を入れ替える。
二つ目。
三つ目。
四つ目。
結果は、すべて同じだった。
――何も、表示されない。
「……え?」
リリアは、不安そうに声を漏らす。
「わたし、なにもない?」
その瞬間。
空気が、張り詰めた。
骨たちは、即座に首を振る。
「違います!」
「無いわけがありません!」
「むしろ、多すぎます!」
「……多すぎて、測れない」
誰かが、ぽつりと言った。
魔王は、確信したように頷く。
「……なるほど」
「お父様?」
リリアが見上げる。
魔王は、少しだけ視線を逸らし。
「……気にするな」
その声は、低く。
だが、どこか柔らかかった。
「数値など、意味はない」
「お前は、お前だ」
リリアは、よく分からないまま。
でも。
「……うん」
そう答えた。
骨たちは、内心で大騒ぎだった。
「規格外ですね……」
「魔王様超えてません?」
「将来、世界どうなります?」
魔王は、聞こえないふりをする。
ただ、水晶を一瞥し。
静かに、命じた。
「……これは、外に出すな」
その一言で。
骨たちは、即座に理解した。
この子は――守るべき存在だと。
リリアは、そんなやり取りを知らない。
ただ、少し不思議そうに首をかしげながら。
「じゃあ、あそんでいい?」
そう聞いた。
魔王は、一瞬だけ口元を緩め。
「……許可する」
魔王城の日常は、続く。
そして。
世界は、まだ――それに気づいていなかった。
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