第四話 裁定




裁定は、感情を挟まない。


俺は跪かない。

死神に姿勢は不要だ。


ただ、脳内に告げられた。


契約違反、確認

対象命、延命

担当資格、剥奪


そして、彼女の最期は、他の死神が迎える。


彼女の寿命も、その先も知る事は出来なくなった。


さらに一つ、追加された事項がまた脳内に告げらる。


違反の影響により死の配置に

歪みが発生予定外の死の監視を命ずる。


――皮肉な命令だ。


一人を救った死神が、救えなかった死を見届け続けなければならないとは。


裁定の最後に、

一文だけが残る。


《彼女の人生への再介入を禁ず》


罰とは、

離れることではない。


生きている彼女を、

迎えに行けないまま見続けること。だと。


その時、裁定は、静かに下された。


声はなかった。

俺に怒りも、断罪もない。


ただ、決定事項だけが流れ込む。


ただ解った事はもう同じ場所には立てないという事。


彼女の死期は凍結され、

回収権限は剥奪。

観測は制限、干渉も禁止だという事、


異議は唱えなかった。

言葉を、最初から持っていなかったからだ。


俺は、裁定を受け入れる事しか出来ないからだ。


ただ一つ、例外が生じた。


地上滞留。



罰でも、猶予でもない。

違反が生んだ歪みが解消されるまで、

俺は「こちら側」に留め置かれた。


人の姿で。

人の時間の中で。









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