第二話 実感
その日は、
特別な予定はなかった。
目覚ましより少し早く目が覚めて、
カーテンの隙間から光が入ってきた。
晴れだ、と分かる。
コーヒーを淹れながら、
昨日読みかけの本の続きを思い出したが、続きを読まずに家を出た。
駅までの道はいつも通りで、
角の花屋の前を通ると
新しい花が並んでいた。
名前は知らないけど
でも、きれいだと思った。
横断歩道で信号を待ちながら、
スマホを確認する。
特に連絡はない。
なぜか心から安心した。
理由は分からない。
ただ、「今日はちゃんと生きてる」
そんな気がしていた。
信号が青になった。
一歩踏み出そうとして、
足元の小石に気づく。
なんとなく、
一呼吸置いた。
その瞬間――
「待て」
低い誰かの声がした気がした。
振りかえってみた。
でも、そこには誰もいない。
気のせいだと思って、一歩下がったとき、大きな影が視界を横切る。
風が強く吹いて、心臓が大きく跳ねる。
「……あ、危なかった」
誰に言うでもなく、そう呟いた。
そのあと、少しだけ世界が鮮明に見えた。
空の色も、
人の声も、
自分の呼吸も。
理由は分からない。
でもその日一日、
私は何度も思った。
生きてる、って
こんな感じなんだな。
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