第1話 入学式


高校の入学式。その日の空気、それは妙に騒がしかった。

真新しい制服に身を包んだ生徒たちは、校門の前で親や友人と写真を撮ったり話している姿、自分のクラス探している姿、見知らぬ人に話しかけている姿。様々な様子が見えた。これから始まる高校生活に期待と不安を胸に抱き思いを馳せているのだろうかなんて考えていた時。


「ねえ、君名前なんて言うの?」

と後ろから声を掛けられた、振り返ると180cmはありそうな背の高い男子生徒が少し照れたような笑みでこちらをみていた。

九条怜くじょうれいだ。よろしく。あなたは?」

會川海星あいかわかいせいだよ。こちらこそよろしくね。」

「九条君は何組だった?」

「俺は1年2組だったよ。會川君は何組だったんだ?」

「俺も2組だよ!一年間よろしく!!」

「會川君も2組なら頼もしいよ!」

「そう言ってもらえて嬉しいな。一つお願いしていい?」

「もちろん。俺に出来ることなら。」

「そう!なら出来れば會川君じゃなくて海星って呼んでくれない?」

「もちろんいいよ。じゃあ俺のことも怜って呼んでくれる?」

「わかったよ!よろしくね怜」

「こちらこそよろしく海星」

「怜って中学どこなの?俺は近くの秋山中学ってところなんだけど」

「俺は水城中学だな」

「水城中って隣町の!?てことは電車通学?」

「いや実は、俺高校進学を機にここら辺に引っ越してきて一人暮らししてるんだ。」

「そうなの!?一人暮らしなんて凄いね!もしも困ったことがあったら何でも言ってね力になるから」

「…ああ ありがとう、その時は遠慮なく頼らせてもらうな。」

「ていうか、なんで一人暮らししようって思ったの?」

「そうだな、…自立するためっていうのと、通学が楽になるからってところかな。」

「 なるほどね!って、ごめんね。時間ぎりぎりになっちゃったね。教室いこっか!」

「ああ、行こうか」


…俺は海星を追い、教室へと向かうのだった。


教室に着いたら、黒板に貼られている名簿を確認する。俺の席は後ろの方だったため、海星とは席が遠くなってしまった。自分の席に座った。ふと隣を見ると教室のざわめきの中でも埋もれることのない存在感。折角の機会なので話し掛けてみようと思ったところで、「全員席に着け~。出席が確認出来たらすぐに体育館に向かうぞ」という言葉が聞こえたため、俺は大人しく指示に従うのだった。


体育館につき、

「春の日差しが心地よく感じられる頃となりました。今日新たな一歩を踏み出す新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。私我が校の教育理念は〜」


という、まるでテンプレートのような式辞をつまらなく聞いていた。おそらく同じようなことを思っている人が沢山いるのだろう。ほんの小さな話声が聞こえるときもある。流石に話すのは、自重するべきでは?と思いながら、PTA会長の挨拶や来賓紹介といった明日には忘れているであろう話を聞いていた。



そんな空気は一変した。ある人が壇上に上がったからである。それは、生徒会長の清水菜緒しみずなおだった。彼女が壇上に上がった。しかし、彼女は話し始めなかった。段々と話し声は止み、視線はほぼ全て彼女に向いただろう。そうして、彼女はゆっくりと話し始めた。

「皆さんが、静かになるまで2分30秒かかりました...

というのは、ちょっとしたジョークです。あまり、肩ひじを張りすぎずにぜひご清聴ください。私は生徒会長の清水奈緒と申します。新入生の皆さん、改めてご入学おめでとうございます。」


先程までの緩い雰囲気が彼女の行動で一変した。大胆な行動だったけれども、効果はしっかりと表れていることが空気から確かに感じられた。流石、生徒会長清水奈緒だなと思いながら彼女の話に耳を傾ける。


「私は、皆さんに伝えておきたいことがあります。これからの学校生活では、きっと様々な選択を強いられると思います。そこで、皆さんが少しでも後悔しない選択をしてほしいと思っています。なので、もしも悩みや不安があったら、その時は周りの大人や私たち先輩を頼ってください。皆さんは、大人になろうとしている段階にいます。しかし、まだまだ大人に守られるべき存在です。ですので、遠慮なく頼ってください。もちろん、言いにくいことであれば友人でも構いません。とにかく、少しでも皆さんにとって楽しい学園生活になることを願っています。以上、生徒会長 清水菜緒でした。」



そう言った、彼女の言葉には確かに思いが感じられた。不思議と彼女になら頼ってもいいのかもしれない。そう思えるようなものだった。

…きっと壇上から去る時、彼女がこちらを見たのはきっと気のせいだろう。



新入生代表 桜庭玲奈さん

そう呼ばれたとき、俺の隣の席からは、「はい」という凛とした声が聞こえた。(…桜庭?)どうやら、彼女の名前は、桜庭玲奈というらしい。彼女は無駄のない動きで壇上へと向かっていった。生徒会長清水奈緒のせいで視線が集中しているものの、それらに一切臆することなく前を見据え話し始めた。

「新入生代表、桜庭玲奈です。私たちは今日、それぞれ異なる環境から、この学園に集まりました。不安も期待もある中で――」


言葉は簡潔で、無駄がない。そして、聞く側を自然と引き込む。


「この学園で過ごす三年間が、私たち自身を形作る大切な時間になると信じています」

彼女は、彼女自身の意志で、前を向いて語っている。


「~ですので、教員の皆様、そして保護者の皆様。どうぞご指導、ご支援のほど、よろしくお願いいたします」

「上級生の皆さまには、様々な場面で関わる機会があると思います。その時は、が仰られたように遠慮なく頼らせていただきます。」

気のせいだろうか、彼女が生徒会長の名前を呼ぶときだけ声のトーンが変わったような気がした。

「私たち、新入生300名の学園生活が豊かなものになるように日々精進していきたいと思います。以上、新入生代表 桜庭玲奈でした。」


そういった彼女は、生徒会長清水奈緒に立ち振る舞いなど、物凄く似ているんだなと改めて感じたのだった


…そしてこの勘が間違っていなかったとわかるのは、少しだけ先の話だった





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学園の美少女たちがなぜか俺の家に入り浸る件 東雲ナツキ @090811

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