第4話
ジュエルは、きっと自分のことなど知らずに尋ねてきたものだと思ったからびっくりした。
(だったら、このことも知ってたのよね……)
口元を覆った包帯に手をのせた。
(それでも笑いかけてくれるだなんて、やっぱり優しい人)
ますます、シルベスターという青年に好感を寄せた。
(祝賀パーティーに来られるなら、貴族かしら……)
自分はもう何年も母と森で暮らしているから、社交界のことなど何も知らないし、シルベスターが何者かは分からない。
年に一度ある自分の父の誕生祭のみ、ジュエルは王宮に入って玉座の近くに腰掛け、終始無言で過ごすだけ。
私生児とはいえ王族であるから、最低限の顔出しは必要なのだろう。
今までは憂鬱で仕方なかったパーティーが、シルベスターのおかげで楽しみになった。
(会ったら、リスさんが元気になったか聞こうかしら)
ジュエルは金貨を握りしめると、雨が止んだあと町医者を呼んで母を診てもらおうと思ったのだった。
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祝賀パーティー当日。
母は小屋に残り、ジュエルだけが王宮にいた。
ドレスは父親が用意した一級品のもの。
王族は白に金色のラインが入ったデザインのものを着る慣わしがある。
普段つけていないコルセットや、高いヒールを履いて腰掛けるのは、意外としんどいものだった。
だが今日はここから、シルベスターを観ることができる。
ジュエルは勘違いをしているので、シルベスターは数多の女性から誘われて、ダンスを披露してくれると思っていた。
(王族ではない貴族なんだろうけど、王子様のようなんでしょうね)
本当の王子様は、腹違いの兄なのだが、ジュエルを毛嫌いしているので、絵本に出てくるような男性とは程遠い。
(血筋を大事にする人だから、私生児である上に醜い容姿をもった私を受け入れられないんだわ)
「デイビス大公が到着されました」
そろそろパーティーが始まる、というところでようやくジュエルの待ち人が現れた。
黒く長い前髪を全て後ろにまとめ、黒と赤でデザインされたスーツで現れた美青年は、間違いなくあの時の青年、シルベスターだった。
(大公?大公だったの?)
驚きながらも、うっとりとした目でシルベスターを見つめると、彼は視線に気付いてジュエルを見た。
周りの人たちはシルベスターを避けるように道をあけたことを、ジュエルは″近寄りがたい美形であり身分の高い大公だからだろう″とまた勘違いをした。
シルベスターはジュエルを見つけると、あの時と同じ嬉しそうな顔をして微笑んだ。
つられて、ジュエルは笑顔になった。
歯を見せるように笑って、しまった。
(しまった!今日はパーティーだから包帯を巻いてないのに!)
時すでに遅し、シルベスターは驚いた顔でジュエルを見つめた。
周囲がざわついて、嘲笑を始めた。
『みた?あの前歯!2本大きくて飛び出してるわよ!』
『さすがネズミ姫ね!』
『あんな容姿で姫だなんて、なんて可哀想なの』
クスクスと嘲笑う声が聞こえて、ジュエルは怖くなり俯いた。
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