第2話
この日はひどい雨が地面を打ちつけていた。
「お母様、誰か来たようです。ちょっと待っててくださいね。」
少女の名前はジュエル。
この時代にはよくあったことだが、王がメイドに手をかけて孕ませ……生まれてきたのがこの少女だった。
私生児であるジュエルは、病弱な母と共に森の中に追いやられており、動物たちに囲まれて生きていた。
親子二人と、愉快な仲間たちとの生活は平和で暖かく、楽しい日々だった。
しかし、問題点があった。
ジュエルは包帯を口の周りに巻き付けてから小屋を出た。
ジュエルは父親である王から
『人前で口を開けるな』
と以前命令されたことがあり、こうやって来客に対応する時は包帯を巻いて、口を隠して会話するようにしていた。
「どなた様でしょう?」
まだ幼い少女にも関わらず、人と目を合わすことが怖い、そう感じるジュエルは尋ね人の腰元に視線を向けて問いかけた。
「あれ?その子は……リス?」
目の前の人間は、黒いマントを羽織っていて、タオルで包んだリスを大事そうに抱えていた。
「はい。この子はリスです。どうか、助けてもらえませんか?このところ、何も食べなくて痩せ細ってしまい……今にも死んでしまいそうなのです。」
ジュエルは、弱りきったリスの顔を見て胸を痛めた。
声からして、相手が男性であることがわかった。
おそらく自分よりは4〜5歳は上なんだろう。
「医者に診せても、動物のことはわからないと言われて……病気がうつるのを恐れて、触診さえしてくれないんです。」
青年はつらそうだった。心からリスのことが心配なのだろう。
「動物に詳しいお医者様はいませんから……ひとまず、私が観ます。中に入ってください。あっちょっと待っててくださいね?母に伝えますから。」
ジュエルはそう言うと、一旦小屋の中に入り、少ししてからタオルを2枚抱えて出てきた。
「風邪をひきますよ」
そしてびしょ濡れのリスを乾いたタオルで包んで左腕で抱き抱えてから、目の前の青年のマントも右手を使ってタオルで拭いていった。
「あ……あの、ありがとうございます。」
青年はぎこちなかった。
もしかしたらジュエルと同じで、人のことが怖いのかもしれない。
「大丈夫です。寝室で母が眠ってますが暖炉はそちらにしかありませんので、そこで対応しますね。どうぞ」
青年とリスはジュエルの家(小屋)の中に入り、案内されるがまま寝室へ続いた。
「失礼ですが、リスのお名前は?」
「あ、この子は、リスと呼んでます。とくに名付けてはいません。」
「あら、そうなんですね。では、リスさん?ちょっとお口を診せてもらいますねー」
青年は、ベッドに横たわっていた母親の近くに置いている椅子に座り、ジュエルとリスのやりとりをじっと見つめた。
前髪が邪魔で見えにくいが、仕方ない。相手を怖がらせてしまうのだから、マントの帽子も深く被って自分の目をジュエルに見せまいと隠していた。
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