♡死神大公の愛おしいネズミ姫♡

みずか🎼

第1話 プロローグ

ここは、とある森の中。


一人の可憐な乙女と、見目麗しい青年が動物たちに囲まれ、身を寄せあって談笑していた。


談笑とはいっても、青年は普通に話しかけるのに対し、乙女は筆談だった。



「ねぇ、その可愛いお口を開けて?歯を見せて?お願い」


青年は包帯で覆われた乙女の唇に、自身の長い指を滑らせて懇願した。


「……っ」


乙女は顔を真っ赤にして目を閉じると、何度も首を横に振って青年のお願いを断った。


「どうして?」


青年は哀しそうに眉尻を下げて、乙女に理由を尋ねた。


乙女は地面をなぞって、文字を綴った。


《醜いから》


「どこが?とっても可愛いのに!まあ、でもいいよ……今夜僕が無理矢理にでもこじ開けて見せるからね」


後半部分は、ふふっと青年が意地悪く笑って耳元で小声で囁くと、乙女はギョっとした顔で青年を見上げた。


「あ!やっと僕の方を見てくれたね。……僕の目、怖くない?隠そうか?」


青年は真ん中で分けていた長い前髪を掴むと、引っ張って目を隠すように動かした。


乙女は慌てて青年の指を掴んで止めると、また土の上に指を押し付けるようにして文字を書いた。


《綺麗だから隠さないで》


青年は読むと嬉しそうな笑顔をこぼした。


「ジル、愛してるよ」


そして乙女の両頬を両手で包み込んで顔を近づけた。


「僕の愛おしいお姫様」


包帯越しに、青年の唇が自分の唇と重なった瞬間、乙女は心臓が破裂しそうなくらいバクバクと動くのを感じた。


(これが、これが、恋……、愛……)



乙女はギュッと目を閉じて、震える手で青年の首に腕をまわした。



小鳥はさえずり、狼は包み込むように二人に身を寄せ、リスやネズミは嬉しそうに二人の間を駆け回った。






これは、動物に愛されながら森で育った″醜いネズミ姫″と呼ばれた乙女と、目が合えば即座に殺される″悪魔の眼を持った死神″と呼ばれた青年の、めくるめく純愛物語である。





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