第2話 月に一度の買い物日和。

 品物を受け取ったサヤは、バルドの「まいどあり!」を背中に受けて、歩き出した。


 月に一回、キャラバンがやって来る日。

 普段から多くの人が行き交う買い物通りは、晴天ということもあってか、いつも以上の賑わいを見せていた。


 とはいえ、あちらこちらから、不満や驚きに満ちた「えぇー!? ないのぉ!?」だの「おいおい、困るよ!」だのが聞こえてくるので当たり前ではあるが、原生生物による流通の滞りは、何もバルドの店だけの問題じゃないのだろう。


 大変だなと、他人事のように現実逃避をしつつ、行き交う人の切れ間を見つけて縫うように歩いていく。


 とはいえ、こんな人混みの中でもサヤの腰まで長い三つ編みは目立つようで、尻尾のように揺れるそれを目敏く見つけた知り合いたちが、一斉に声をかけてきた。


「サヤじゃないか! いい野菜が入ったんだ! 買っていくかい?」


「ごめーん! 予算オーバー!」


「サヤ! 先日はありがとうな! こいつは礼だ! 持っていけ!」


「うぉっと! サンキューおじさん!」


 バルドの店で少し高めの買い物を多くしてしまったため、商品のオススメはサクッと断って。


 先日のお礼としてナイスコントロールで投げ渡された粉袋は、大切な食料として、しっかりキャッチ。


 少し増えた荷物を抱えて、買い物通りを抜ければ、一気に人通りが少なくなる。それでもいつもより、視界の情報量は多いのだけど。


 大小の差はあれど、四角い箱のような薄ベージュの建物が建ち並ぶ町で、端っこには大量の水瓶に囲まれた水売りの人々が座り込んでいる。


 いつもならついでとばかりに買っていくのだが、生憎、今日は両腕が塞がっているし金もないので、挨拶をしつつ通り抜けた。特に暗い顔も声もしていない様子からして、彼らの商売は原生生物の影響は受けてないようだ。それに少しばかり、胸を撫で下ろす。


 なかなか雨も降らず、そんなに大きな水源が地下にあるわけでもないこの町で、彼らや彼らの売る水の存在は、金より重いのだ。


 市場から少し、だいたい十五分ほど歩けば、他の四角い箱のような建物の中に一軒だけ、ぽつんと建っているドーム状の小さな建物が見えてきた。


 ベージュ色に、少し赤茶色が混ざる壁には、この赤の星特有の植物である蔦が張っている。


 この建物こそ、サヤの開いているカフェこと『喫茶セレン』の店舗兼住居だ。


 茶色の木材でできた薄い扉を、慎重に開ける。


「ただーいまー」「ポメェェェェーーーー!!」「おぶっ」


 その瞬間、顔面目掛けて飛びついて来た丸い赤毛玉に視界を塞がれ、慌ててセンサーを切り替えた。

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