観察領域における「祝福の儀式」の歴史的影響

水城みつは

祝福の儀式

1.概要


 本レポートは、観察領域における「祝福の儀式」と呼称される事象を、歴史的な観点から考察したものである。


「あれ、まだレポート仕上げてなかったん? 提出期限明日よね」


「うぉっ!」


 「祝福の儀式」により現地住民hjkl


 背後からの声に入力が乱れた。


「『祝福の儀式』? ああ、あんた、あの惑星好きよね、剣と魔法のファンタジー世界だっけ? 結局、高次領域への進出がないから観察領域指定のままのとこよね」


「いいだろ別に。あそこを研究対象にしとけば研究のための観測員候補になれるかもしれないんだよ」


 知的生命体の独自の発展に干渉してはならないとの方針から、低次領域へのアクセスは大分昔に禁止された。

 僕が研究対象にしている惑星も遥か昔にはレジャー対象として人気だったとデータには残っていた。しかし、そのデータも人道的な配慮とかで閲覧制限がかかっており、研究が中々進まない。そんな中でも分かったこともあり、その一部を今回レポートにまとめようとしていたのだ。


「それで、『祝福の儀式』の何が分かったの?」


「あー、今回は類似の別の惑星も含めて調査した結果、多くの惑星で『祝福の儀式』を新年など、ある特定の時期にまとめて行う事がわかったんだ」


 『祝福の儀式』とは『祝福』と呼ばれる特殊技能、地域によっては『スキル』とか『ギフト』とか呼ばれる能力を得るための宗教的な儀式だ。

 多くは教会などで儀式と共に授かる、もしくは、覚醒する事になる。


「へー、それって重要な事?」


「それが、調査するとある時期より前には時期にばらつきがあったんだが、歴史上特定の時期以降は、複数の惑星で同じタイミングで行われる事が多くなっていたんだ」


「ん、複数の惑星? 惑星毎に時間の概念が違うのに?」


「まあ、そうだね。そこが今回のレポートの肝となる歴史的影響ってやつさ」


 奇妙な事に現地惑星の暦ではなく、僕達の標準歴と呼ばれる暦でほぼ同じ時期に『祝福の儀式』が実施されるように収束していたのだ。

 特に、所謂新年のタイミングが多かった。


「ふーん、ああ、つまり、高次領域からの干渉かい?」


「お、流石だね、その通りだよ。歴史的にはその時代に『XRMMO』として剣と魔法のファンタジー世界が流行っていたようなんだ」


「あー、現在の観測員の元になったXR技術の全盛期か」

「そう、クローンに物質転送、意識同期と現在では厳しい規制がかかっている技術のオンパレードだ」


「……歴史的背景はわかったけど、それと『祝福の儀式』の時期に何の関係が?」


「その頃は規制が緩かったんだ……」


「緩かったって何の?」


「……『ガチャ』だ。新年には高レアリティのスキルピックアップガチャが開催されていた。そのタイミングで教会に殺到するプレイヤーを見て、現地住民も同じ時期に教会で『祝福の儀式』を受けるようになったわけだ」


「つまり、その習慣が干渉がなくなってからも定着して残っていると」


「その通り、いやあ、まさかレポートのためにレトロなXRMMOの攻略サイトを漁ることになるとは思わなかったよ」


 オンラインゲームの情報は基本的に水物でデータが更新されると消えていく。それを何種類ものゲームについて探すのは大変だった。


「……やはり、ガチャは悪い文明だな」

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