第3話 サイレンが鳴るまで
みんなこんにちは! わたし、
突然だけど失礼します。
「
「……え、ま、まじ?」
私は、ついに男の子をお食事に誘いました。
なぜ、こんな事になっているのか。それは一週間ほど前に遡る。
私はアークロックという組織に入りました。
そのアークロックの基地で、私はソファーに座りながらこう整理したの。
「……なるほど、つまり人には潜在的にアークという超パワーが宿っていて、それが解放されるとアークが暴走してしまうと。そしてその状態をアークリオンというと」
二人は頷いた。だから私はそのまま続ける。
「そして私は暴走してしまい、アークを閉じれる特別な鍵を扱う『
二人は頷く。そして私は勢いよくこう言った。
「それでどうして私が仲間に!?」
鍵斗くんが師匠と呼ぶ人物。美人なお姉さんであるシーラさんは、冷静に語り始める。
「私も君と同じ、超パワーを持っている。それは記憶を消す力だ。本来それでアークに関する記憶を消すのだが、君の場合は力が大き過ぎて消せなかった。ゆえにこちらで保護したいのだ」
「……そ、そうなんですか?」
「ああ。一言で表すと、強すぎるの、君」
「……ま、まじか」
どうやら平凡と思われた私にはアークの才能があったようだ。
そんな感じで保護されるように仲間入りして、一週間。
あの日はあれから家に帰らされて、そこから何も無し。
何も言われずに、何もされなくて、放置。
ただ帰り際に『アークについては他言無用』の書類にサインさせられただけ。
このモヤモヤがみんなにはわかるだろうか!?
あり得ない、何も無さすぎてあり得ない。連絡すらないとは。
このモヤモヤは、例えば遊びにいく約束してるのに、当日になるまで何も言われないような不安の表れなのだ。本当に明日遊ぶんだよね……? ってなるあれだ!
つまり、私は不安なのだ。
ゆえに、食事に誘ったわけである。
決して、下心ではない!
「……えーと、ほら、友達と食べれば?」
私は
その事実に少しムッと不機嫌になりながらも、鍵斗くんに迷惑がかからないように苦笑いに近い笑顔を浮かべながら、謝罪するように手を合わせてこう言う。
「その、二人は忙しくてさ」
すると鍵斗くんは周りを見て、バツが悪そうにこう返してきた。
「……言いづらいんだけどさ」
「……?」
「陽向さん陽キャだから、周りの目が厳しくて……」
その返事は予想よりも単純なものであり、それならと私は自信満々にこう言った。
「一人で食べるよりかは恥ずかしくないよ」
普段人を傷つけない主義の私だが、やる時はやる。彼は「何故それを……!?」と言いながら、ようやく折れて「……ついて来て」と言ってくれた。
私は不思議に思いながらついて行く。
向かった先は屋上だった。しかしそこは鍵が閉まっているはずなので、私は首を傾げて
「……屋上? でも鍵閉まってるよ?」
「そうだね、でも僕は
「うっそ犯罪し放題!」
まさかの返答に驚く私。彼は鍵穴に指を置いて「じっと集中すれば構造が見えてくるの。そしてそれに合わせて作る感じかな。中に粘土を入れるイメージ」と言う。
そして指を離してこう続けた。
「まあもう鍵はあるんだけどね」
「あるんかい!」
ズゴーッ! と、ずっこける私。そして鍵斗くんが持っていた複製されていた屋上の鍵でドアを開けた。
その先は、まさに青春そのものだった。
「すごい!」
「でしょ? まあこれが僕の超パワー、アークと言ってもいいのかもね」
「……なんか含みのある言い方。どういう事なの?」
彼は神妙な面持ちでこう語る。
「アークにも大小があるんだ。ほとんどの人間が中だけど、僕は小だったらしくて、アークは使えなかった。あるんだけど、引っ張り出せないほど小さい感じ。まあその代わりに鍵を使う才能があったっぽいけどね」
「アークと鍵は違うの?」
「違うらしい」
「そうなんだ。ムズイね」
「微分積分くらい難しいよ」
「簡単でしょ、あれは」
「え!?」
「じょーだん」
私はニシシと笑う。
そして彼の制服を摘みながら引っ張って、いい感じの場所に移動してお弁当を出した。
彼もお弁当を出す。
私たちは横並びで風に当たりながらご飯を食べた。
「青春だねぇ。おかず交換するかい?」
私はそう言いながら彼の弁当を見ると、ピカピカの白米の地平線すらもうない。
空である。虚無である。しかも逆にピカピカである。
「食べるの早すぎ!? 音速かよ!」
「そう?」
「そうだよぉ。わたし心配、大丈夫? 噛んでる? ちゃんと」
「噛んでるよ」
優しいスマイルでそう言う彼に、私は何も言えなくなる。
なんでこんなに見ちゃうんだろ。……いや、見てない見てない!
恋する乙女みたいじゃん。そんなんじゃないし。
私は彼から顔を隠して、モミモミと頬をマッサージした。笑顔の栄養剤である。
「……でも、不思議な感じ。君がアークロックっていう組織で、アークリオンを倒しているなんて」
「組織って言っても師匠が上司で僕が部下な二人だけの組織だけどね……」
「それでも、組織って羨ましい。私、部活に入らなかったの後悔してたの。だから少し嬉しい」
「そうなんだ」
私はそう言う鍵斗くんを指差して、真剣な顔でこう伝える。
「だから! 何も言われず放置は嫌! 私も仲間なんだからちゃんと話して」
「……何を?」
「アークロックの活動とか! アークリオンが出たとか! 遊びに行こうとか!」
「……でもどうやって」
私はスマホを見せる。そして強引にこう言った。
「連絡先! 交換!」
「……は、はい」
そして私は男の子の連絡先をゲットした。多少強引だったけど、私のスマホに映る彼の連絡先を見て、少し安堵する。
私は語気を緩めて、優しくこう伝える。
「次から何かあったらこれで教えて。あと、アークロックの基地って私も行っていいの?」
「いいけど……多分行っても面白くないよ。師匠しかいないし」
「鍵斗くんも行くんだよ」
「そんな!」
ショックを受けているのか悲しんでいるのかわからない鍵斗くんを見てシシシという笑みが溢れてしまう。
不思議と、彼と一緒にいるのは楽しい。
これがアークロックの日常か……と、私はしみじみと感じていた。高校に入って初めて入ったグループは、部活でもなんでもない、謎の組織。
そんな組織に入れて、鍵斗くんという友達ができて、私は楽しさを覚えていたんだ。
でもさ、どんな事にも表と裏がある。
楽しいことがあれば、辛いこともある。
それを意識しなきゃ、不幸に押しつぶされるんだ。
ジリリリリリ! という甲高い音が響く。
私は驚いたようにこう叫んだ。
「何!?」
そしてアナウンスが流れる。
「火災です! 火災が起きました! 生徒の皆様は速やかにハンカチなどで口を塞いで廊下に集まり、教員の指示に従って避難してください。繰り返します……」
その放送を聞いて、強く胸がサイレンを鳴らす。私は屋上から校舎を見下ろした。
「鍵斗くん! 一年五組の教室が燃えている!?」
私の声に反応して、彼は何もない空間から鍵穴が付いた剣を取り出した。そしてその剣を見つめてこう呟いていた。
「キーハートが叫んでいる」
「なんて?」
「アークリオンがいるらしい」
「……っ!」
私はその事実にプレッシャーを感じて動きを止めてしまう。でも
「僕はアークリオンを止めに行く。
「あ……!」
私は、未だ動けない。
怖いんだ、恐ろしいんだ。
アークリオンの事もよくわかってない。アークのこともよくわからない。戦い方なんてもっとわからない。
でも、彼を失う方がもっと嫌だから。
初めてできた安心できる男友達である鍵斗くんの背中を思い出しながら、私はこう言った。
「……置いてかないでよ、ばか!」
どれだけ怖くても、大切なものがあるから、私は進み続けられるんだ。
昔っから、人を助ける偽善でしか、勇気の出ない子だったから。
てか、
「……でも!」
今はアークリオン優先。
私は、階段を勢いよく降りて、一年五組へ向かった。
だって私は……アークロックの一員なんだから!
行くしかないでしょ!
アークロック 加鳥このえ @guutaraEX
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