第3話 ゲーム異世界転移と固有スキルツリー

『この異世界はアストリア・オブ・メモリアの世界だと思うんだよなあ。

 服のデザインとかスタイリッシュだし、魔石を主軸にした魔法文明、技も奥義として扱えるし』


 火乃宮が早口で仲間の女子高生と女子中学生に説明していた。


『つまり、リアル寄りじゃなくて、ゲーム的な中世ファンタジーだと思う訳よ』 


 あまりにも口が達者なので、女子に引かれている気がしないでもない。


『あ? オッサン知らねーの?

 超大作国民的RPGなんだから常識だろ、ゲーム知識なきゃこの異世界では生きていけないぜ?』


 俺のゲーム知識は国民的な『どらくえ』で止まっているが、RPGの基本は変わっていないはずだ。


 つまり、一人よりも二人の方が、強い。

 と、当時の記憶を思い出していた。


「メィア、そっちに行った!」


 小型ドローンで逃げるどろどろのスライムを、メィアの方へと追い詰める。


「……うん」


 古ぼけた棍棒でスライムを叩き潰すと、死体は残らず弾け飛んで消えた。

 理屈は魔力で構築された身体が消滅した……とかなんだろうか。


 絶命を確認してから、ステータスウィンドウを意識すると、視界に半透明のステータス画面が浮かび上がる。


「お、メィアのレベルが三になってる」


「……変わった気がしない」


 メィアは不思議そうに手を何度も握ったり開いたりした。

 ちなみに俺のレベルは五だが、せいぜいどこに振るか悩んでいるスキルポイントが溜まったくらいだ。


「少し休もうか」


 こくりとメイド服姿のメィアは頷いて、俺たちは木陰に腰を下ろした。

 暖かい風が髪を揺らしてくすぐったい。


「ソウイチロウは戦えないの?」


「物凄く弱いよ、僕は」


 自分で言っていて悲しくなる。


 他の召喚英雄のように強力なスキルツリーだったのなら、メィアを守るカッコいいオジサンという未来もあったのだろうが、期待しても無駄だ。


 俺たち各召喚者に与えられた、固有スキルツリーは四つ。

 

 武器戦闘に特化した【戦争の王冠】スキルツリー。

 護りと回復に特化した【守護の王冠】スキルツリー。

 魔術に特化した【秘術の王冠】スキルツリー。

 

 そして僕は――。


「記録に特化した【記憶の王冠】を所持する召喚英雄……文字通り、記録や記憶に関することしか扱えない」


 俺たちを召喚した王の話では、七龍討伐の物語やこの世界の変化を記録する役割として、女神によって生まれたスキルツリーらしい。


 ……たった一人では何もできないことに違いはない、悲しい能力だ。


「メィアに飛ばしたドローンもそう。

 なんだよ」


「さつえい……?」


 異世界人に単語が上手く翻訳されていないらしい。

 映像と音を記録すると伝えたら、彼女は「ふむ」と、言っただけだった。


「レベルを上げれば、便利なスキルがあるかもしれないけど……今は先のスキルは見えないね」


「そう」


 スライムを何十体と倒して得た魔石は数少ないが、換金所でルイズに交換すれば、今日のご飯と宿代くらいにはなるだろう。


「ねえ、ソウイチロウ、ここで死ぬ?」


 揺れる草原を見ながらメィアは俺を見上げた。


 夕方前の穏やかな時間。

 新緑が穏やかに揺れる。


「メィアは見たこともない綺麗な景色の中で死にたいんだろう?

 ここがそうかい?」


 彼女は黒髪を耳にかける。

 袖の合間から、一瞬左腕に痣のようなものが見えた。


 どこか怪我でもしているのか、生まれつきか。


「……候補にしておく。

 町の外に出ることもあまりないから、もっと色々選びたいかも」


「僕もそう思う。ここじゃ楽に死ねそうにないしね」


 それに、と僕は猛毒薬を思い描いた。


「死のうと思えばいつでも死ねるから」


「うん、一番良い死に方を選ぼうね、ソウイチロウ」


「ああ、約束だ。最高の死に場所を探そう、メィア」


 俺たちはお互いの素性もよく知らないまま、肩を寄せ合った。

 多分、無理やり深入りしない距離が――心地良かったんだと思う。



 小さな町ではあるけどメルルに戻ると、ホッとする。

 根無し草だが、今はここが拠点だ。


 俺は古ぼけた宿で二つ部屋を確保する。

 夕食までもう少しあるので、メィアと武器屋に足を運ぶ予定だ。


 さすがに森で適当に拾った太めの木の棒を、棍棒として使い続ける訳にもいかない。


「まだ生きてたの? この悪魔が!」


 偉そうな女性の声に合わせてざわめきが広がる。

 背筋を這いあがる寒気を感じた。


 慌てて階段を下り、宿屋の出入り口から飛び出す。

 

「な……!」


 宿屋の前にはちょっとした人だかりができていた。

 心配だが自分は関わりたくないと遠目に見つめる町人が円を作る。


 中央は蛇のマークを持つ旗を掲げた三人の女戦士の姿が確認できた。


「お、お客さん……連れの方が――!」


 深く聞かずとも悪い噂は的中した。

 あの蛇のマークは、この地を治めるメルルの辺境貴族が掲げているものだ。 




【あとがき】=============

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