第十五章 裏切りの代償
魔王との対話から三日後。
事件は、突然起きた。
「店長! 大変だ!」
リーナが血相を変えて駆け込んできた。
「どうした」
「襲撃だ! 店が——」
その時、爆発音が響いた。
創太は反射的に外に飛び出した。
店の外壁に、大きな穴が開いていた。
「何が——」
「人間だ!」
リーナが叫んだ。
「過激派の連中が、店を襲撃してきた!」
「過激派?」
「魔王と話したことに反発している奴らだ! 『魔王に媚びる裏切り者』だって——」
次の瞬間、矢が飛んできた。
創太の肩を、かすめた。
「くっ——!」
「店長!」
リーナが創太を庇い、剣を抜いた。
「下がれ! 私が相手をする!」
「でも——」
「言う通りにしろ!」
リーナの声は、有無を言わさぬ迫力があった。
創太は店内に退避した。
外では、戦闘の音が響いている。
「……畜生」
創太は自分の無力さを呪った。
戦闘能力がない自分には、リーナの足手まといになることしかできない。
「マネージャー」
『はい、店長』
「状況は?」
『襲撃者は約二十名。武装した人間の集団です。リーナとカイルが応戦しています』
「味方の損害は?」
『現時点では軽傷者のみ。しかし、数的不利です』
「……」
創太は拳を握りしめた。
やがて、戦闘の音が収まった。
「店長、終わったぞ」
カイルが、疲れた声で報告した。
「襲撃者は撃退した。逃げた者もいるが、主要な連中は捕らえた」
「リーナは?」
「無事だ。軽傷だけだ」
「よかった……」
創太は安堵の息を吐いた。
しかし、問題は解決していない。
「過激派——彼らは、なぜ?」
「魔王と話したことが、許せなかったらしい」
カイルは苦い顔で言った。
「『敵と対話する裏切り者を許すな』——そういう考えの連中だ」
「……」
創太は黙り込んだ。
わからないでもない。魔王軍に家族を殺された者も、いるだろう。彼らにとって、魔王との対話は「裏切り」に見えたのかもしれない。
「でも——」
創太は首を振った。
「暴力では、何も解決しない」
「同感だ」
カイルは頷いた。
「この件、どうする?」
「……首謀者を呼んでくれ」
「わかった」
首謀者は、中年の男だった。
名前はグレン。元は農民で、魔王軍の侵攻で村を滅ぼされ、家族を失ったという。
「なぜ、あんなことをした」
創太は静かに聞いた。
「決まっている!」
グレンは叫んだ。
「お前は魔王と話をした! 俺たちの敵と! 家族を殺した奴らと!」
「……」
「裏切り者だ! お前は、魔王の味方なんだ!」
「違う」
創太は首を振った。
「俺は、誰の味方でもない」
「嘘だ!」
「本当だ」
創太はグレンの目を見つめた。
「俺は、店長だ。店長の仕事は、客を守ること。そして——」
「この店では、全員が客だ。人間も、獣人も、エルフも——そして魔王も」
「……何を言っている」
「わからないかもしれない。でも——」
創太は一歩前に出た。
「暴力では、何も変わらない。殺しても、殺し返されるだけだ」
「じゃあ、どうすればいい!」
グレンが叫んだ。
「俺の家族は、殺された! 復讐しなければ——」
「復讐して、どうなる?」
「……」
「家族は、戻ってこない。憎しみは消えない。そして——新たな憎しみが生まれるだけだ」
創太の声は、静かだが力強かった。
「俺は、そういう連鎖を止めたい。だから——魔王と話をした」
「……」
グレンは黙り込んだ。
涙が、彼の頬を伝っていた。
「俺だって……憎んでいる……」
「わかってる」
「でも、どうすれば……」
「わからない」
創太は正直に言った。
「でも、一つだけ言える」
「何だ……」
「諦めるな。生き続けろ。そうすれば——いつか、道が見えてくる」
「……」
グレンは、膝から崩れ落ちた。
「すまなかった……俺は、間違っていた……」
「……」
創太は、彼の肩に手を置いた。
「許す。でも——」
「ああ……わかっている……」
「ルールを破った代償は、払ってもらう」
グレンは頷いた。
「何でもする……」
「じゃあ——」
創太は言った。
「農業部門で、働いてくれ」
「……え?」
「元は農民だったんだろう? その経験を、活かしてくれ」
グレンは目を丸くした。
「追放しないのか……?」
「追放しても、何も解決しない。お前の能力を、この集落のために使ってくれ」
「……」
グレンは、再び涙を流した。
「ありがとう……ありがとう……」
「礼はいい。働いて返せ」
創太は背を向けた。
「リーナ、カイル。あとは頼む」
「了解」
創太は店内に戻った。
壁に開いた穴を見上げる。
「……修理しないとな」
そう呟いて、創太は作業を始めた。
事件は終わった。
しかし、まだ道は続いている。
人間同士の対立。魔王との対話。そして——
「戦争を終わらせる方法」
創太は考え続けていた。
その答えは、まだ見つかっていなかった。
物語は続いていく。魔王との対話、人間たちとの軋轢、そして迫り来る最終決戦。創太のコンビニは、異世界の希望の灯として、輝き続けていた。
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