第三話“疲れをとる”
五月半ばの終わり頃。芍薬の色取り取りの花が咲き乱れる時。
[カラン コロン]
「遅いよー。レイっち、シーラー!!」
「ごめん、皐ちゃん。ちょっと最近ごたごたしてて。ごめんね。」
最近、新しい企画の計画が進んでて忙しい。
「そうなんだ。僕も昔は大変だったけど、今は大体が自由だからね。」
裕君は、昔会社で何かあって、自殺しそうだったから、皐ちゃんからの提案で今は自営業をやってるらしい。そのせいで一歩も家から出ないし、食事もしないし睡眠もあんまりしないしで、心配になった皐ちゃんがVielfaltに誘ったらしい。
「そっか。裕、今は自営業をやってるんだったか。」
あと、この間裕と協力した成果もあって、皐ちゃんと秦は仲良くなったように感じる。
内容は、まず四人で集まる約束をして、帰りが同じ方向なのを利用して、帰り際に、俺と裕君が、何かと理由をつけて、席を外し、二人きりにさせるっていう作戦だ。裕君は、俺達の作戦を二人が感じ取ってたって言うけど、まあ仲良くなったのには代わりはないんだし、いいんじゃね?って思うんだけどな。
「うん。家でできるから、最初は一切外出しなかったんだけどね。」
「なんの話ししてるの?」
「あ、美咲ちゃん。久しぶり。学校は?」
「もう終わってるよ」
彼女は、美咲ちゃん。皐ちゃんや裕君と出会う前に仲良くなった女子高校生だ。確かカードには
【名前 志倉美咲
呼び方 美咲・志倉・ミサ
ジェンダー レズビアン
一人称 私
その他 ないよー 】
可愛らしい見た目と、可愛らしい口調とは裏腹に怒ると口調が想像できないほどに悪くなるらしい…仲間だ。まあ、こっちは見た目と口調に可愛さの欠片もないが。
「お久しぶりでございます。美咲さん。しばらくは来なかったようですが何かありましたか?」
「久しぶり!マスター。林間学校があったからここに来れなかったんだ。でも、これからも続けて通うから、許して」
「許すも何も、ここに来るかはお客様次第でございますから」
マスターって常に優しいよな。
「そっかー。ま、アリガト」
「そういえばさ、こないだ美咲ちゃんがわからないって言ってた問題あって、俺達にもわからないのあったじゃん?あれ調べてみたらさ…」
◇◇◇ ◇◇◇
「やっほー。レーくん、久しー。皆で何やってんの?仲間外れはひどいぞー」
「おお。未宮兄。久しー。今まで何やっとったん?俺等は美咲ちゃんの問題を一生懸命解いてんねん。仲間はずれ言うてもお前さん、仕事忙しいやろーが」
こいつは未宮兄。案外有名な配信者らしいけど、顔出ししてないらしいし、声だけで未宮兄だってすぐに分かるわけもないから、なんて名前で配信してるんかは、わからへん。こないだカード見せてもらった。
【名前 未宮友来
呼び方 未宮・みみっち・ゆーらー・友来
ジェンダー ゲイ
一人称 俺
その他 特に無い 】
昔は気難しくて、敬語ばっかりだったらしいけど、配信者を始めるにあたって、口調を明るくしないといけないし、過去に色々あって、今の口調になったらしいけど、時々敬語が出るし、字に起こすと絶対敬語になるらしい。未宮兄によると視聴者はそこがいい!って言ってるらしいけど。
「せやな。俺は有名人やから、忙しいねん。それでも俺に会える喜びを噛み締めて、俺を信仰したらどうや。レーくん」
有名人言うても、活動内容わからんかったら信仰の対象にはならへんやろ。
「はいはい。了解。未宮兄に会える喜びは、宇宙よりも広いですよ。未宮兄」
「お前いじってるやろ!レー!!」
「いじってないし。俺の信仰心を蔑ろにするとは、未宮兄でも許されへんで」
「いや、信仰対象がおかしい言うとるなら変えるべきやろ」
「信仰対象の声は聞いたらあかんからな。我々下僕は信仰対象の声を直で聞いたら耳が焼けるんやで。知らんかったん?」
「んなわけないやろ」
せやで。そんなわけないけど、まあ…焼けると思ってる人、一人ぐらいいるやろ…多分。
「はいはい。零、友来、そこまでにしろ。お前らの不毛な争いを高校生がみてるぞ」
不毛な争いではないと思うけどな。
「はいはい。わかったわかった。なー未宮兄。俺らの喧嘩は、喧嘩するほど中がいいに分類されるタイプやもんな」
「せやなー。レーくん。俺らの中は喧嘩するほうがええもんなー」
「「なー」」
「お前らの仲って、良いんか悪いんかわからんな」
◇◇◇ ◇◇◇
「んじゃ。勘定するか」
「せやなー。レーくんとはなれんのは嫌やけどな」
「はいはい、友来の冗談はさておきそろそろ解散しないと日暮れるな。」
「そうですね。そろそろ帰りましょうか」
「ミサっちは、親御さん心配しないの?」
「門限はないので大丈夫ですよ」
「各々勘定な」
◇◇◇ ◇◇◇
「んじゃまあ、また」
「レーくんたち、またねー」
「俺、友来と同じ方向なので、一緒に」
未宮兄と秦たしかに同じ方面だったっけ。だから、あいつら、早々に打ち解けてたのか。
「私こっちなので。」
「私も美咲ちゃんと同じ方面だから、バイバイ」
美咲ちゃんと皐ちゃんもか。やっぱり帰りの方面が一緒の人達は仲良くなるのが早いな。
「零さん、一緒に帰りませんか?」
「ん?オッケー」
そっか。裕君もこっち方面か……確かに、秦よりも、早めに仲良くなった…気がする。ほんのちょっとの差だったけど。
ま、いっか。
五月半ばの終わり頃。芍薬の色取り取りの花が咲き乱れる時。優しい風が背中を押すように吹いた。
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