第一話“Vielfalt入店”

四月半ばの終わりかけ。桜の全盛期が終わって少し経った頃。


「おい!秦。この後ちょっと付き合え。」

「どこに?」

「Vielfalt!!」

「どこだよ。」

「SDCTの友達から教えてもらった!!俺等みたいなやつが集まるカフェなんだって。」

Soji Deicatad Chat Tool略してSDCT。発言の仕方がわからないけれども、アプリの説明には、LGBTQ+当事者たちが完全匿名でやり取りができ、当事者のみということもあって、多くの人々が利用している。今のところ、闇バイトなどでも使われたことがない…らしい。

「ちょっとでいいから付き合ってくれよ。な!!ちょびっとだけだから。ついたらすぐ帰っていいからさ!!」

「奢ってくれるなら、ついて行ってやるよ」

「よっしゃ。んじゃ。上がったらエントランス集合な」

「はいはい」

◇◇◇ ◇◇◇

「おせーな。」

……そういえばあいつモテるんだったか。今頃女性陣に囲まれてるんだろうな。俺も人のこと言えねーけど、あいつならホントのこと言っても軽蔑されないだろうし暴露したらいいのにな。

「待たせたな。零」

「おう。めっちゃ待ったぞ」

「全然待ってない。くらい言えねーのかよ」

「言えないんじゃなくて言わないんだよ。なぜなら、お前相手だから」

そう。言えないんじゃない。言わないんだ。言おうと思ったら言える。まあ、言う相手はいないけれど。

「ほら、行くぞ」

◇◇◇ ◇◇◇

「ここか。なんかカフェって感じがする」

「カフェなんじゃねーの?Miya高矢だったか?から聞いてねーのかよ。」

「聞いた。カフェだって」

SDCT内の友達Miya高矢…高矢って呼んでるけど。の情報によるとドイツ語で『多用性』っていう意味らしい。日本人のアロマンティックが経営してて、多くのLGBTQ+当事者が集まる知る人ぞ知る名店って感じらしい。最近日本にもそういう店舗が増えてきているからここらへんに住んでいる人全員がVielfaltに通っているわけではないらしい。

「ならカフェっぽくて正解だろ。」

「そっか。そうだな。まあいいや。入ろうぜ」

◇◇◇ ◇◇◇

[カラン コロン]

「いらっしゃいませ。おや。ご新規さん?カウンターでいいかな。」

おお。THEイケオジ。昔は大層モテたことだろうな。今も、一部の層には絶対モテる顔をしてるけど、アロマンティックだもんな。まあ、女を抱けるゲイもいるんだし。恋人が一切いなかったとは限らないか。

「あ。はい。カウンターでいいよな?零」

「ああ。いいよ」

「了解。じゃあお二人ともこれに書き込んでくれるかな?書きたくないことは書かなくていいから。」

「あ。はい」

【名前

 呼び方

 ジェンダー

 一人称

 その他                      】

これに書き込めば良いんだよな。

【名前 天藤零

 呼び方 零・天藤・レーくん

 ジェンダー パンセクシュアル・Xジェンダー中性

 一人称 俺・自分・私

 その他 口調粗め                 】

「俺書けた。零は書けたか?」

「おう。あの、これってなんですかね?」

「人によっては、こんな接し方されるのは嫌だと感じる人がいるからね。それをわかるために、横に棚があるでしょ?そこにそのカードを入れていつでも閲覧可能にしようと思っているんだけど、嫌なら拒否することもできるからね。どうする?」

へえー。たしかに、俺も女扱いされるの苦手だしな。そういう…地雷って言うの?それを踏まないためにもそうゆうのあると俺はいいな。他の人はどうかわからないけど。

「んじゃ、入れる前に秦の見せてや。」

秦がどう書いてんのか気になるしな。友達のこういうの見るのって、ちょっと楽しいねんな。

「ああ。ええで。んじゃ、零のも見せてな。」

「んじゃ交換。」

【名前 高羅秦

 呼び方 高羅・秦・シー

 ジェンダー ゲイ

 一人称 俺

 その他 口調悪い                 】

おお。その他似てるな。でも呼び方は他の同期に呼ばれてる呼び方やな。まあ、驚くところは一切ないな。

「特筆するところはねえな。言うのはあれだけど、おもんね。お前の」

「零のもな。」

「仲がいいですねお二人とも。ご注文は何にします?」

ちょっと腹減ってるしな。サンドイッチでも頼むか。コーヒーは飲めないしな。

「アイスミルクティーとサンドイッチで」

「俺は、アイスコーヒーで。あと、俺もサンドイッチを」

秦も腹減ってたのか。以外だな。昼飯めっちゃ食べてたのに。

「了解致しました。少々お待ちください」

「お前も腹減ってたん?」

「いや。ただお前が食べてんの見たら絶対腹減るだろ?それに備えて頼んだ。」

「あっそ。」

「おまたせしました。アイスミルクティーとアイスコーヒー、サンドイッチ二つです。ここでは他のお客さんとの交流も一つの楽しみ方とされている人がいるので、話しかけられたりされることもあるでしょうけど、他のお客様の御迷惑にならない範囲でしたら、ご自由にお話ください。話しかけに行くことも結構ですよ。」

話しかけにはいかないかな。知らない人に話しかけんの苦手だし。

「わかりました」

「では。私は仕事があるので、御用がある際は、読んでいただけると幸いです」

「どうする?話しかけに行くか?零」

「嫌。いかない。まあ、話しかけられたら話すかも知んないけどな」

「だな」

◇◇◇ ◇◇◇

「そろそろ出るか」

もうこんな時間か。案外居心地良かったな。絶対また来よう

「そうだな。案外居心地良かったなここ。また来るとするかな。お前はどうする?秦」

「多分また来ると思うな。ま、来るときはお前を誘うわ。一人ではまだこえーし」

たしかにな。会社では持ててるお前が一人でここにはいっていくの見られたら、絶対会社で言いふらされるもんな。それなら俺と一緒に入っていくの見られたほうが、俺が無理やり連れてきたって言い訳立つし。

「お会計ですね?」

「はい。」

「では、アイスコーヒーが350円アイスミルクティーも350円サンドイッチが一つ500円なので、合計1200円ですが、初回なので200円引かせていただき、合計1000円でございます。」

「いいんですか?」

200円は少ないようでデカいぞ。

「はい。また来てもらうために必要な割引ですよ。」

「わかりました。また来ます。では、これで。」

「1000円ちょうどいただきました。またお越しください」

◇◇◇ ◇◇◇

[カラン コロン]

「また来るか。」

「だな。」

これからなにかあるたびに来るだろうな。これからお世話になりますVielfaltさん。


四月半ばの終わりかけ。桜の全盛期が終わって少し経った頃。いつもと違う風が吹いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る