第10話


「チッ、まだいやがったのか」


回復魔法はよくわかんねぇけど、まだ動ける。


「上等だコラァ!!」


先制攻撃を仕掛ける。

一体目に向かって跳び膝蹴り。顔面にクリーンヒット。


「グオッ!?」


よし、効いてる。


間髪入れずに、横のオークの膝に関節蹴りを叩き込む。

へし折るつもりで全力で蹴り込んだ。


「グオオ!!」


オークが膝から崩れ落ちる。


だが——多勢に無勢だ。


死角から別のオークが棍棒を振るう。


「ぐおっ!!」


横薙ぎの一撃を腹に食らって吹き飛ばされる。

地面を何度も転がった。


「……っ」


土と血の味が口の中に広がる。

だが想定内だ。這うように立ち上がる。


だが、問題が起きた。


二体のオークが俺を無視して、神崎たちの方へ向かい始めた。


「グルルル……」

「グオオ……」


完全に俺を雑魚と見切りやがった。


「チッ……」


だが、そんな心配は杞憂だった。


「ファイアボール!」

セリアの炎魔法が一体を包む。


「グオオオ!!」


オークが炎に包まれて悶え苦しむ。


「どりゃあ!」

ガルドの巨斧がもう一体を真っ二つに斬り裂いた。


「グオッ……」


二体があっという間に沈黙する。


そして先にダメージを与えて怯んでいた二体にも、容赦なく襲いかかる。


「はぁ!」

ガルドの斧が振り下ろされる。


一体目、頭を割られて倒れた。


「はっ!」

神崎の剣が二体目の心臓を貫く。


これも倒れた。


残り一体。


最後のオークが逆上して神崎に襲いかかろうとした瞬間——俺は後ろから飛びついた。


太い首に腕を回してチョークスリーパー。


「大人しくしやがれ」


「グオオ……!」


オークが必死に暴れる。

だが、絶対に離さない。


「それっ!」


神崎の剣がオークの胸を貫いた。


「グオ……」


オークの体から力が抜け、ドサリと崩れ落ちた。


ようやく討伐完了だ。


「……はぁ、はぁ……」


膝に手をついて荒い息を整える。

全身傷だらけ。肋骨が何本かイカれてる気がする。


「いやー、楽勝だったね!」

神崎がニコニコと笑っている。息一つ乱れていない。


「さすが僕だね」


「さすが勇者様ですわね」

セリアが冷たい目で笑った。


「俺様も絶好調だぜ!」

ガルドが豪快に笑う。


そして俺の方を見て、顔をしかめた。


「おい剛、お前ボロボロじゃねぇか。大丈夫か?」


「ああ……なんとか」


「すぐ治療しますね!」

ルナが慌てて駆け寄ってきた。


俺の体を見て青ざめる。


「肋骨も折れてる……回復薬使います」


小瓶から透明な薬を取り出し、傷口に直接塗っていく。


「……っ」


焼けるように沁みる。

だが、痛みが少しずつ引いていく。


「ふー……」


深く息を吐く。

全身が軋むように痛い。


でも——


神崎たちを見る。

三人とも無傷。汗一つかいていない。


(まあ、全員無事だ)

(Aランク依頼も達成できた)

(いいぞ、悪くねぇ)


拳を握りしめる。


「ふふ」

神崎が優雅に剣を鞘に納めた。


「勇者・神崎ハルト、なんだか覚醒しちゃったかも!」


目をキラキラさせている。


「これなら、Sランクも夢じゃないね!」


オークの死体を見下ろしながら、満足げに笑っていた。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る