第11話


 それから数週間。

俺たちは次々と依頼をこなしていった。


二回目の依頼はダイアウルフの群れ討伐。

作戦通り、俺が引きつける。


だが、こいつらは人間とはわけが違った。

俺の拳も蹴りも、まるで効かない。

獣特有の柔軟な筋肉が衝撃を吸収しやがる。

反射速度も桁違いだった。


「っ……!」


鋭い牙が左腕に食い込む。

振りほどこうとした瞬間、別の一匹が肩に噛みついてきた。


「くそっ……!」


肉が裂ける音。血が噴き出す。


神崎たちが素早く片付けてくれたから良かったものの、俺は全身を噛みちぎられてボロ雑巾みたいになっていた。

自力で歩けなくなって、ガルドに担がれて帰還。


数日は回復薬漬けで寝込んだ。


三回目の依頼はトロール討伐。

オークよりさらに巨大な化物だった。


身長は三メートルを超え、丸太のような腕。

俺が前に出て攻撃を受け止める。


トロールの拳が俺の腹に直撃した。


「ぐおっ……!」


ありえない吹っ飛び方をした。

前世でナナハン突っ込まれた時より飛んだ。


背中から地面に叩きつけられる。

肺から空気が全部抜けた。視界が霞む。


ギリギリ意識を保てたのは奇跡だった。


なんとかトロールの足にしがみついている間に、神崎たちがあっさり倒してくれた。


またガルドに担がれて帰還。

回復薬漬けの日々。


四回目は盗賊団討伐。

人間相手の初めての依頼だった。


数は二十人ほど。

モンスターに比べれば、こいつらが一番楽な相手だった。

スピード自慢だの隠密技術だの言っていたが、ダイアウルフに比べればスローモーション。


シンプルにボコった。


「ナメんなゴラァ!」


拳が顔面に入る。

一人、二人、三人と倒れていく。


だが、ここでもヘマした。

乱闘中、調子上がって前線に突っ込んできた神崎と激突。


体勢を崩した隙に、弓矢を腹に受けた。


「剛、邪魔しないでよね!」


神崎が苛立った声を上げる。


幸い致命傷には至らなかったが、深い傷だ。

またしばらく寝込む羽目になった。


依頼は成功した。

毎回、成功はした。


だが——


「いい加減にしろよ毎回毎回! お前また怪我してんのかよ……!」

ガルドが呆れ果てた顔で言った。


「回復薬の消費が多すぎるわ。いくらすると思ってんのよ」

セリアが冷たく言い放つ。


「どこかのへなちょこさんがすぐ怪我するから」


神崎は大きくため息をついた。


「もうさ、囮でいいからちょろちょろしててよ。僕ら最近覚醒してきちゃってるし、足引っ張られるより全然いいから」


俺を見る目が変わっていた。

軽蔑と失望が混じった視線。


ルナだけは申し訳なさそうに治療してくれた。


「……ごめんなさい、私がもっとしっかり身体強化できていれば……」


「……気にすんな」


俺が怪我するたびに依頼が止まり、パーティの苛立ちが募る。

無理もない。


一ヶ月でまだ四回しか依頼を達成していない。

こいつらの反応を見る限り、相当悪いペースなのだろう。


足を引っ張ってばかりだ。

悔しかった。ただただ悔しかった。


(つーか、俺いるか?)


こいつら毎回ピンピンしている。

モンスターも瞬殺。

俺がいなくても何の問題もなさそうだ。


自分の役目すら見失いかけていた。


傷だらけの拳を見つめる。


(……俺、何やってんだ)


俺の傷が完治した頃、神崎が新たな提案をした。


「みんな、次はAランクダンジョン行くよー!」


羊皮紙を掲げて見せてくる。


「じゃーん、Aランクダンジョン入場許可証! ついにギルドが僕らの功績を認めたのさ」


「おお、ついに来たか!」

ガルドが口笛を吹く。


セリアも珍しく興味を示す。

「これが成功すれば、Sランクも見えてくるわね」


神崎が俺の方を見た。


「剛、大丈夫?」


「……ああ」


「よし、じゃあ明日さっそく行こう」


俺は拳を握りしめた。


(ダンジョンか)

(どんな化物が出てくるんだ?)


生まれて初めてだ。

俺の自信は揺らいでいた。

 

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