第4話
次に目覚めた時見知らぬベッドの中にいた。
死んだろうか。もともと死に体だった。それをオークに蹂躙されれば死にもするだろう。結局肌を暴かれたことに絶望すればいいのか、出産まではしなくて済んだと安堵すればいいのか。
しかし覚醒は飢餓感も叩き起こした。はっとして身を起こそうとするが信じられないほど力が入らない。冷静になって考えれば、一度極限状態まで行ったのだから思うように動けないのは当然だ。
当然、だけれど。は? つまり?
私、生きてる?
「目覚めたか」
掛けられた声に目だけを向ける。魔王がいた。分かってはいた、というか気付いたから脇目も振らず自分に刃を向けたのだ。ことごとく私の邪魔をする男だな。睨みつけたが、さてどこまで通じたものか。
「人用の薬膳を用意させた。食うといい」
「……どういう、おつもりで?」
なんかコレ食って体力回復させろよ、的な言葉が聞こえた気がしたが、当然魔王がシオン姫にそんなことをするシナリオなんて無い。ひょっとしてある程度回復させたら牢屋に戻されるのだろうか。母体が衰弱してたら繁殖に使えないもんな。
サッと目を彷徨わせるがスタッフも自決用ナイフも近くにない。うーん可能性として濃厚になってきた。こりゃ薬膳は拒否一択だ。
目を閉じて運命に従おうとすると「おい」と苛立った声がそれを遮った。当然魔王だ。命令を無視されればそりゃ苛立つか。しかしそれ以上に応じる理由がない。この男本当に邪魔だな。
「いくら待とうとあの勇者は来ない。今はスカル将軍のもとに囚われている」
んあー。そっか。ロロアは負けたか。しかもスカル将軍か。スカル将軍は所謂「ヤツは四天王の中でも最弱……」ポジションのボスキャラだ。名前のとおりスケルトンで彼との敗北エロイベントではロロアは処女を無くさない。物理的に肉棒がないからだ。
だから文字通りスカル将軍の手練手管だけで墜されていくわけだがそれがエロいのなんのって。処女のまま淫乱になっていくのなんか二律背反しててエロいよね。その内スカル将軍に軽く触れられただけで軽イキするくらい調教されるのだ。はーエッロ。あと個人的な嗜好だが他の四天王に比べればスカル将軍が一番まとも。他もまた尖った性癖してんねん。なら調教はされるが人らしい生活を送らせてくれるスカル将軍のが絶対マシ。
もうそこにはいくら人間最強でも四天王最弱に負けるのか、という感想しか思い浮かんでない。だからか魔王はどこかじれったそうだった。
「わからないのか? いくら耐えようとも助けなどないということだ」
そりゃそうだろう。元よりロロア以上の戦力なんて人間側にはない。とはいえそれが人間絶滅にただちに繋がるわけではない。なんせ魔王軍がやったことと言えばロロアを下したことたけだ。人間はまだ負けてはいない。
「命乞いをしたらどうだ? 自らナイフを突き立てるのは躊躇ったのだから死ぬ恐怖はあるはずだろう!」
だって自殺は怖いじゃん。なんで魔王が怒っているのかわからない。その怒りのまま私を殺さない理由もわからない。命乞いをして欲しいのならそのまま首でも絞めれば麻痺した恐怖心も戻ってくるだろう。……いやどうかな。今ならそのまま諦めそうでもあるかも。
しかしして欲しいことを素直にするような性格ならこんなことになっていない。絶対命乞いだけはしないと心に決めて、目を閉じたままフッと身体の力を抜いた。
「次に、生まれくる勇者に、期待しましょう」
これを言うだけで辛い。もう喋らせんなよと思う。眠るように死ねたら最高だが餓死ってやっぱしんどいわ。この通り後ろ向きなことしか考えられない。重要な決定を下す時はお腹いっぱいで、たくさん寝た後に限る。叶わないのだから仕方がないけれども。
寝たのか気絶したのか私には判断が付かなかったけれども、私はもう一度意識を暗闇に沈めた。
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