第3話 ガンは、常に飛ばさないでくだぱい

 「…こいつが今回の更生係?かよ」

 勇者が、そう言った。

 −−なんだよ、悪りぃかよ!!


 と、いつもだったら、突っかかっていた。

 が。

 衝動を抑えろーー!!!


 多分、今の私の顔は「かわいい」とはきっと程遠い。

 血管ピキピキってなってるんだろうな。

 というのが、容易に想像できちまう。


 というか。

 勇者さん、「今回は」って…?

 「今回は」ってことは−−。

 

 前回もあったってことですよね!?!?

 一体、何があったんや。

 黙り込む−−というか、困惑している私に。

 ついにチンピラの1人。

 

 メガネくん(仮称)が、痺れを切らしたように口を開いた。

 「何かいったらどうなんだよ」

 メガネくん。

 同じメガネをつけている人間だって認めたくないや。

 

 ごめんね?

 「…いやぁ、何か言ったら…って。ねぇ?」

 神様、おねがいします。 


 助けて!!

 『……』

 シカトォォォォォォ!?!?!?

 私は、多分今。

 この世界で一番、ブサイクな顔をしている。

 …憶測であるが。

 つーか。


 「あの、…神様?」

 『………………』

 だから、フルシカトォォォ!?!?

 前言撤回。

 

 私は多分。

 今、一番変顔ができている。

 『がーんばっ』

 送られてきたのは、コレだけだった。


 つまり、アレですか?

 神様。あなた私を見捨てたァァァ!?!?

 ガビーンっ!

 みたいな顔をしている私をみて。


 勇者パーティーの皆様は。

 コメントしづらそうな、顔をしている。

 「ハッ!」

 勇者が、笑った。


 金髪勇者が笑った。

 「…何で笑うんですか?」

 「くっははっ!おめえみたいな輩が?」

 −−私は思う。

 

 良いんですか?

 仮にも勇者が?

 人のことバカにして。


 「前の屈強な男はなぁ、3日で逃げたぜ?」

 ニヤニヤしながら、勇者は言う。

 つまりこいつらは私を、舐めている訳か。


 −−ほーう?

 舐めんなや、ワレェェ!!!

 あーあ、あーあ!

 キレていーっすかぁぁ!!!


 …やめぴ。

 止そう、今は。

 「…だから、なんですか?」

 そう言うと勇者パーティーの皆様。


 お口をだんまり。

 −−舐めてたんでしょうねぇ。きっと。

 「…何お前?生意気」

 竹刀を持ったサイドテールちゃんが言った。

 

 「あっははっ。貴方達の方が、生意気ですよ?」

 乾いた笑顔で、応戦といこうではないか。


 両者に、緊張が走った瞬間だった。

 ガシャアン!!

 という音がしたのは。


 みんな、バッと振り返った。

 なんとそこには。

 さらに治安が悪そうな奴らが。


 「…何ですか。あれ」

 勇者が、言った。

 「くっそ、グレムリンかよ!」


 …なんだよ、グレムリンって!

 あんたらは知ってるかもだけど、私全然知らないからぁ!!


 バンダナをつけた人が言った。

 …目つき悪りぃなぁ!この野郎!!

 「よぉ、グレム」

 

 「お前良いのかよ?二代目勇者が!魔王討伐バックれてよお!」

 バンダナマン。

 うちの問題児を、随分とまぁ煽ってくださるじゃないの?


 ムカつく。

 なんか、自分にも言われてる気がして。

 私は拳を握った。


 拳に、力が入るのがわかる。

 グレムリンだか、グレムゾンだか。

 そんなチンピラたちは、ワラワラと勇者一行を囲んだ。


 あんたら、度胸あるね。

 私は好きだよっ!

 「やっちまいなぁ」

 

 バンダマンが、そう言うと勇者一行にワッと手下が襲いかかった。

 …。

 「神様。」

 『なぁに?』


 神様の口調が、妙にイラつくのはなぜだろう。

 喧嘩売りそうな自分を、なんとか押さえつけた。

 

 「私も、あいつらに混ざっていーい?」

 『ダメに決まってるじゃない?』

 綺麗な玉砕しちゃったよ!


 そんなバカなことをやっている間にも。

 さすが、勇者一行。

 ステゴロだろーが、なんだろーが。

 

 数の不利にも関わらず強い。

 安心感を覚える蹂躙っぷりだ。

 …蹂躙に安心感なんて、ないんだろうけど。


 4人の身のこなしは、よかった。

 なかなかに筋がいいな、あの不良ども。

 そんな風に気を抜いていたから。

 多分、私は気づかなかったのだろう。


 ガッ!と肩を掴まれた。

 「なっ!?」

 勇者・グレムとその他3人の動きが止まる。


 ありがとう!

 反射的に止まってくれるということはっ!

 私は、見捨てられてなんてなーーいっ!


 きゃーっ!と1人舞い上がる私の首に。

 ヒタっとした感触を感じた。

 「…」

 見ると。

 ナイフが。


 バンダナマンさん、いいんですか!

 私が一番嫌いな不良になりますよ、貴方!!

 

 バンダナマンは、言った。

 「テメェら、動くな!」

 肩を掴む手に力を込めるな!

 痛いから!!


 「こいつがどーなってもいいのかよ!」

 あ、この人。

 私が一番嫌いなタイプだ。

 

 高らかに告げるバンダナマン。

 顔を顰める勇者一行。

 私は、バンダナマンの手首を掴んだ。


 −−くっふふ!

 いい機会じゃないか。

 せっかくだから、私が見せつけたろう。


 ギリギリっと私はさらに力を込めた。

 バンダナマンの手首を掴む手を。

 −−私を舐めたら、どれほど恐ろしいかを!

 私がなぜ死ぬ前、「処刑人のキヨ」と呼ばれてたのかを!


 「痛い痛い、痛い!」

 痛みに悶えるバンダナマン。

 『ちょっ、更生係が何暴力やってんの⁉︎』

 焦る神様。

 

 「うるさい、神様。」

 私は静かな声で言った。

 「私は、私のやり方でこいつら、真っ当にするから。」

 

 バンダナマンの手を掴み。

 せーのっっ!!

 背負い投げじゃあい!!


 「舐めた結果こーなるんだよ、ばぁぁぁかぁぁぁ!!」

 という、おめでたい一文を添えて。


 ドンっ!という鈍い音がした。

 グレムリンの皆様は、固まる。

 そして、リーダーがやられたからか。

 わーっと逃げた。


 「腰抜けーっ、べーっ」

 私はそいつらにあっかんべをしてやる。

 くるっと、勇者の方を私は見た。


 勇者もとい、グレムは。

 口をあんぐりと開けている。

 そして。


 「メガネ女…お前…一体…?」

 はぁぁ、まぁ。

 そうなりますよねぇ、と苦笑いした。


 「え、えーっと。」

 私は咳払いをした。

 ちょうどいい。


 ちゃんと、私のことを覚えてもらおう。

 「異世界転生しました、元ヤン兼あなた方の更生係になりました。」

 メガネを取る。


 違うから。 

 カッコつけてませんから!

 「あだ名は、「処刑人のキヨ」ちなみに総長もやってました。」


 メガネを拭く。

 多分、さっきの背負い投げでゴミが飛んだからだ。

「…清野喜代って言います。…よろしくね⭐︎」


 こうして。

 私の一風変わった異世界ライフが、始まった。

 

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