放課後の不審な影

放課後。


摩耶は、教室から見えるポートアイランドを眺めていた。


「あーあ、暇だな。このままじゃ、湊川さんとの関係が壊れるか自然消滅するな。暇すぎて。」

**8ヶ月前、入学のために住吉から2号島に渡って寮に入った時はこんな退屈じゃあなかったんだけどなぁ……**


彼が全寮制高校を初めて恨んだ瞬間であった。


しばらく教室の窓からポートアイランドのビル群を眺めていると、突然摩耶の視界が暗転する。

**誰かが俺の両目に手を……?**


彼の耳元で、誰かが優しい声でこう囁く。

「……だーれだ?」


「えっ……湊川……さん……?」


湊川は摩耶の両目から手を離し、

「正解!……というか、ずっと窓眺めてどうしたの?」

と、しゃがみながら椅子に座る彼を見上げるようにして言った。


「三宮までポートライナーに乗るお金が無くて、ましてや、俺の家ってさらに遠い住吉だろ?寮で退屈に過ごすしかないから、教室に残って本島を見てたんだ。」

摩耶は頬を赤らめて、再びポートアイランドを眺め始めた。

湊川から溢れ出す気品と香水の香りが、彼の恋情をさらに掻き立てているのだろう。


湊川はポン、と手を打って

「暇なら私と一緒に勉強しよっか?付き合う前の伊川谷君のイメージって、完全に赤点常習犯なんだよね~。」

と、片手を口に当てて言った。



◇◇◇

それから、自習室で日が暮れるまで湊川と摩耶は勉強した。

その教科は、数学A、化学、高校国際貿易学基礎など……


「はぁ……疲れた……」

摩耶は筆箱にシャーペンをしまいながら、吐息まじりの声で呟いた。


瞼が痙攣した状態の彼の顔に湊川は顔を近づける。

「私は、やっと伊川谷君との時間をゆっくり過ごすことができて楽しかったよ。」


摩耶は内心、どきっとした。

「お、俺も、うん。あの、勉強、楽しかった。」


「その言い方、本当?」


「いや、本当っす」


「ふーん」


湊川がぶっきらぼうにそう返した、その時。


「カシャッ」

少し開いた状態の自習室の扉から、スマートフォンのカメラがはみ出していた。


摩耶は不審に思い、ドアの方へ向かう。

**俺ら絶対撮られてたよな……**


すると、ドアの磨りガラスの向こう側に見える影は焦った様子で廊下を走り、どこかへ行ってしまった。


「伊川谷君……今のなに……?」


「分からない。ただ、良いことではなさそうだな……」

背筋が凍る感覚を、摩耶と湊川は覚えた。

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