アルテア•レイ•ライアー ~最強とは?~

『なぁアルテア。世界を救ったらお前は何をしたい?』

『そうだね。君たちと平和な世界の旅をしたいね』

『いいねっ、ついでに私と結婚しようよっ!』

『おまっ、俺がいる前でイチャイチャするな! 俺も混ぜろ!』

『なによ? アンタは関係ないでしょ!』

『あはは、まぁ考えてはおくよ』


 そう、僕には仲間がいた。世界を救うために冒険者になってから、ギルド内でも一番強いパーティーと認められた。

 世間は僕たちがいるだけで湧く。たまに熱烈なファンに尾行されることもあったけど。


 懐かしいな。あの頃は皆が笑っていて楽しかった。

 だけど僕は絶望した。失われたものは戻ってこないと。


『みんな、なんで……。僕がいけないのか……』


 何度も考えてしまう。あの時、僕が選択を間違えなければ。

 何周したのかも分からない。常日頃、夢にも出てくる始末だ。


『そんな顔するなよ。お前は勇者だろ?』

『でも……僕は皆を守れなかったんだ!』


 そうだ。僕は弱い。

 神様から貰った力を与えられても尚、仲間を助けられなかった。

 勇者という称号は重荷だ。僕には責任が大きすぎる。


『天下の勇者様が泣き虫だって伝われば子供が不安になるぞ? 伝説を作るのはお前にしかできないことだ。俺たちがお前の引き立て役になってやる』

『そんなの認めない! 僕も君たちといたい!』

『だめだ。お前しか魔王は倒せない。それを今、ここで証明するんだよ』


 僕にしかできない? 僕は皆がいたから立ち向かえた。

 いまさら押し付けるのは違う。僕は一番弱いんだ。


『……あのな、お前に言い忘れたことがあるんだ。正直、聖剣を引き抜いた時に俺は嫉妬したんだ。俺は勇者になるために鍛錬してきたけど、聖剣はお前を選んだ。だから、お前とパーティーを組んで、何が足りないのか研究していたんだよ』

『な、なにを言っているんだ! 遺言みたいな話をするなよ!』


 なんだよそれ。僕も最初から聖剣なんて必要なかったんだ。


『だったら君が聖剣を握れよ! 今ここで契約を結べばいい!』

『ならお前はどうする? ここで逃げても殺されるだけだぞ? 世界の危機はお前の手のひらにある。いまさら逃げるな』


 ……うるさい。僕だって一度は世界を救いたいと思った。

 でも、キミがいたから。そして、他の皆がいたから臆病な僕でも勇気を貰えたんだ。


 今更じゃない。今ここで君がいなくなるのが嫌なんだ。


『頑張れ。俺はお前を応援する。あと女の子とは程々に付き合えよ? またストーカーとかいるかもしれないからな』


 僕の仲間は最後の力を絞ってそう話して、魔王の根城の中で消滅した。

 なんだよ。勇者になるとこんな絶望が待っているのか。

 ……そうか、僕は最初から勇者に憧れを持たなければ、こんな結末はなかった。

 僕ではなく他の人に譲れば、仲間の命は僕の背中にのらなかった。

 命を背負わない人生を歩みたい。今もそう思っているんだ。

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勇者の心は黒い。だから、弟子は剣を取った ミツマン @kohei617

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