第1話 偉大なる者、それは勇者。
ある村に一人の命が誕生した。
その名はダリオス・ヴィレッジ・カルエル。
ダリオス村の村長、ダリオス・ヴィレッジ・チーフの第一子である。
「おお、マザー! 私の可愛い息子を抱かせてくれ!」
「あらダリオス。私たちの子を抱きたいの?少し待ちなさいな」
「そんなこと言っている場合か! 私は今すぐにでも息子の体温を感じたいのだよ!」
マザーの冷静な言葉に対し、村長ダリオスは鼻息荒く興奮していた。
それもそのはず。息子を産んだ朗報は、村にとって喜ばしいこと。
たった一人の子ども。それは村の活気を取り戻すお祝いごとなのだ。
「よしよし、私の可愛いカルエル。生まれてくれてありがとう」
「ダリオス。それは私に言うべきじゃない?」
「あっ、ごめんよマザー。キミにも感謝している」
「本当かしら? 真っ先にカルエルに飛びついたじゃない」
「本当にごめんって。私だって頭を下げる思いだよ」
マザーの愚痴に、村長は申し訳ないと反省する。
こんな幸せなことはない。
皆は歴史の移り変わりと同時に幸せを感じる。
まぁ長々と話したが、世界が救われた世の中で生まれた息子。それが俺である。
そして、俺はいつしか勇者アルデアの伝説に憧れを抱くようになった。
そう、俺は毎日のように彼の伝説を語るマニアになったのだ。
毎日、毎日。俺は勇者の物語を語り、座学や鍛錬に明け暮れる。
勇者と並ぶ強者になり、勇者アルテアの右腕になりたい。
それを目標にした俺は、自分の夢を追い続けていた。
しかし、俺にはそれに見合う実力がまだない。
毎日魔術や剣技の練習をこなすが、まったく成果が出ない。
親には期待されているが、俺は自信が持てなかった。
だが、俺にはプライドがある。自分に可能性がなくとも、直向きに努力していた。
「母さん、今日もトレーニングしてくる!」
「分かったわ、頑張ってね!」
母は俺の日課に対して、「応援している」と口にする。当然、勇者に憧れることも承知の上だ。
では何故、右腕になる努力をするのか。その理由は経験を積み重ねるのが大切だからだ。
強者は敬意を示される。だから、生半可な努力ではなく、敢えて険しい道のりを歩く。
勇者の仲間として戦える可能性があるのは、このメニューが最善。
時には苦しいことも辛いこともある。だが、もし鍛錬を達成すれば、勇者の隣に相応しい逸材になる。つまり、地道な目標を重ねて基礎的な練習をこなすことが重要。というわけ。
頂点を見るより、目の前の弱点を潰す。それが鍛錬の正解だろう。
勇者の隣は何十年もかかることだからな。
「さて、そろそろおっちゃんのところに行くか」
俺は鍛冶屋を経営するおっちゃんの方へ向かう。
そこは、唯一の武具や防具、そしてマジックアイテムを扱う店。俺はそこで働きながら剣術を教わっている。
「おっちゃん、おはよう」
「おお、カルエルか。今日もよろしくな」
「うん、よそしく」
おっちゃんは嬉しそうに答え、店の制服を渡す。
そして、エプロンに着替えると、客を呼び込むために店の看板を任された。
「おっちゃん、今日はよろしく」
「おう! あっ、そうだ」
「どうしたの? おっちゃん」
「今日この店のお得意さんが来るから、大事にしてくれよ?」
「お、お得意さん? 誰のこと?」
「それは……あとのお楽しみだぜ?」
そう言ったおっちゃんはニマニマ不敵に笑い、秘密の隠し事をする。
一体、誰が来店するのか。とても気になるが、今は仕事に集中するべきだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます