第6話 評価は、割れる
会議室の空気は、重かった。
壁に貼られたホワイトボード。
そこに書かれた名前。
霧島 恒一(高3・投手)
最初に口を開いたのは、年配のスカウトだった。
「正直に言おう。
俺は、いらない」
即断だった。
「球速がない。
フォームも地味。
高校生にナックルは危険だ」
別のスカウトが、うなずく。
「捕手依存が強すぎる。
プロで捕れる人間がいるのか?」
スクリーンに、映像が流れる。
ナックルで三振。
高めストレートで詰まらせる。
若いスカウトが、前に出た。
「待ってください」
声が、少しだけ震えている。
「確かに、完成度は低い。
でも――」
画面を止める。
「回転数、ほぼゼロです」
室内が、ざわつく。
「この安定感、
偶然じゃありません」
別のベテランが、腕を組む。
「だからこそ、怖い。
ナックルは、再現性がない」
若いスカウトが、言い返す。
「彼は、再現してます。
毎試合」
沈黙。
資料が、配られる。
握力測定。
数値欄は――
空白。
「……壊れました」
誰かが、呟いた。
「左右差なし。
指の独立性、異常」
年配スカウトが、舌打ちする。
「だからって、
博打だ」
そのとき、
一番奥に座っていた男が口を開いた。
「だから、面白い」
全員が、そちらを見る。
編成部長だった。
「失敗すれば、何も残らない。
だが――」
スクリーンに、
捕手の映像が映る。
「捕れる人間が、
もう一人いる」
早乙女。
「バッテリーで評価すべきだ」
会議室が、再び静まる。
「指名順位は、低い。
育成でもいい」
編成部長が、結論を出す。
「だが――
リストからは、外すな」
ホワイトボードに、
赤丸が付けられた。
霧島 恒一。
評価欄に、書き込まれる。
『異端。だが、消せない』
その頃、俺は知らない。
だが確かに――
プロの世界は、
俺を見始めていた。
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