第2話 雨宮は死んだ。
神谷の投球ノートは、
想像していたものと違っていた。
最初は普通。
球種や配球のメモ。対戦校の癖、長所短所。
そして、自分への命令。
「八回、先頭は歩かせてもいい」
「この場面で感情を殺せ」
「エースは弱音を吐くな」
あの一条がこんな事を考えていたのかと
僕は違和感を覚えながらも、
ノートを読み進める。
それは攻略本であり、
同時に“エースの在り方を定義する教本”だった。
翌日の練習。次の大会に向けての紅白戦。
投げている最中にふと、昨日のノートを思い出した。今の状況がノートの場面と一緒だったからだ。
配球、間合い、視線。
考えずとも身体が動く。
打者は詰まり、
捕手は首を傾げる。
その時僕は初めて一条を感じた気がした。
家に帰りまたノートを開く。
ノートは後半に行くにつれ投球と関係ない内容が増えていった。
「孤独に慣れろ」
「理解されようとするな」
「二番手は、影であれ」
これは寧ろ天才なりの投球論なのだろうか。
明らかに一条が自分に向けた文章だと思うが
最後の一文がどうしても引っかかる。
「二番手は影であれか…」
少しでも一条は僕のことを意識していたということだろうか。
そして僕はページをめくると違和感に気がついた。
昨日まで空白だったページに文字がふえているのだ。
自分は書いてない。
しかし、確かにそれは一条の筆跡だった。
そこに記されていたのは、
投球論でも、戦術でもない。
ただ一行。
「次はお前の番だ。」
エースは死んだ 与太郎 @rkg_rei
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