第13話 瑠璃、風邪を引いて餓狼に看病される
額に、温かい体温を感じた。
ちょっと硬くてゴツゴツしているけど、優しくそっと触れている。
母は私をこんな風には触れてこなかったし、おばあちゃんとは違う。
「誰……?」
ふ……と、まぶたを開けると、見慣れた自分の部屋と額に触れている大きな手の一部が見えた。
『目が覚めたか。熱があるから、まだ寝ていろ』
餓狼の声だった。
大きな手が離れていって、顔を動かして見てみると餓狼が横にいた。
水で冷やしたタオルを、私の額に乗せてくれるところだった。
「熱……が、あるの?」
目を覚ましたばかりでよくわからなかった。
でも身動きしてみて、体がだるいので風邪を引いてしまったかもしれない。
「ひゃ……」
餓狼が何も言わずに、冷たいタオルを額に乗せた。
『なかなか起きてこないので様子を見に来たら、ぐったりとしていたので驚いた。今までの疲労が出た、とお医者様が言ってた。……ゆっくり休め』
そう言い餓狼は、私の頬を人差し指で撫でた。
「……? うん」
どうやら熱があるみたい。
ぼーっとして頭がまわらない。
「あ……。
自分の仕事の分を折り紙たちにやってもらおうと上半身を起こして、枕元に置いてある折り紙で作った飾り箱へ手を伸ばした。
中には、私の折った折り紙たちが
取り出して
「折り紙たち、私の代わりに働いて……!」
すると手のひらくらいの折り紙たちが次々と、動物の折り紙から人型へ変化した。
『瑠璃様、お辛そう……』
『大丈夫でしょうか?』
『私達にお任せください』
それぞれの個を持って、私に話しかけた。
「ふう。よろしく頼むわね……。指示は、カサネ家当主 鈴子様から聞きなさい……」
『はい。瑠璃様』
折り紙たちは部屋から出て行った。
私の代わりをしてくれるだろう。
「瑠璃。ちゃんと寝てろ。熱が高い」
上半身を起こしたまま、項垂れた。
ダメだ。思ってるより熱があるみたい。
「きゃ!」
餓狼は私を強制的に抱えて上向きにし、布団へ押し込んだ。
目でちゃんと休めと脅してくる。
見張っているみたいで怖い。
「ふぁい……」
きっと無理やり起きても使い物にならないだろう。
仕方がない。休んで早く回復しないと。
『食事は摂れるか?』
餓狼が心配そうに聞いてくる。
「ない……。あとで食べる……」
『わかった。あとで鈴子様に、消化の良い食事を作ってもらう』
ちゃんと寝てろよ。と言って餓狼は私の部屋から出て行った。
たぶんまた、私を心配して様子をそっと見に来るだろう。……なんだかその心配性なところ、私の知っている人に似てる。
とにかく、寝る。
そして回復……しないと。――私はそのまま眠ってしまった。
『……熱を出して。そうだ。いや、休んでいる』
話声で私は目が覚めて起きた。
餓狼の声? ……だよね。誰と話をしているのだろう?
「ん……。餓狼なの?」
私は横を向いて餓狼の姿を探した。
朝に座っていた位置にまた餓狼は、いた。どうやらご飯を持って来てくれたらしい。
美味しそうなご飯の香りがした。
『どうだ? ご飯を食べられそうか?』
上半身を起こして見てみると、この部屋には私と餓狼しかいなかった。
「餓狼。誰かと話をしていなかった?」
まぶたをこすりながら餓狼へ聞いた。
窓から入ってくる太陽の日差しが、高い位置にあるのでお昼くらいになっているのだろうか?
『いや?』
「……そう」
気のせいかな?
餓狼が持って来てくれたご飯は、鈴子おばあちゃん特製のお粥や消化の良いものばかりだった。
『食べられそうか?』
餓狼へ返事する前に、ぐ――っとお腹が鳴ってしまった。
『くくっ……! 食べられそうだな』
餓狼に笑われた。我ながら正直なお腹だ。
「笑わないでよ。返事より先だったけど」
声を出さずに震えながら笑っている。
『ははっ』
餓狼が笑っているなんて珍しい。
『少し、安心した。ご飯を食べて薬を飲んで、また休め。そして早く治せ』
頭をポンポンと撫でられた。
「? え」
急な頭をポンポンされて驚いた。
餓狼は気にせず、私にお茶碗を渡してきた。
熱いから気をつけろ、と言って続けて木のスプーンも渡してきた。
「えっ、と……あっ」
寝ていたからうまく指を動かせずにいた。
落としそうになったスプーンを餓狼が受け取ってくれた。
すると、スッと私の持っていたお茶碗を餓狼が手に取った。
『食べさせてやる』
「へ?」
餓狼はスプーンでお粥をすくって、フーフーと冷ましてる。
えっと……これはまさか。
『ほら。熱いから気をつけろ』
口の前には、餓狼が冷ましたスプーンの上にあるお粥が。……どうしよう。
私、ちっちゃい子じゃない。などと動揺して心の中で思っていた。
『ん』
スプーンを動かして食べろと、目で訴えていた。
熱が上がりそうだった。
餓狼のことだから、きっとなにも考えてない。
そうだ。意識する方がおかしい。そう考えて「あむっ!」と口を開けてお粥を食べた。
もぐもぐ……。
お粥の中には何か一緒に煮て入っていた。
「美味しい……」
おばあちゃんのお料理はやっぱり美味しい……。泣きたくなる……。
もう一口、欲しいと思って私は「あ――ん」と、何も考えずに口を開けた。
『……!』
「ん?」
真っ赤になった餓狼がいた。
「え……」
はっ! もう大きいのにやってしまった!
「あっ……、ごめん。もう大人なのに恥ずかしい……。自分で食べるわね」
手を伸ばして、餓狼からお茶碗を受け取ろうとした。
いくらなんでも甘えすぎた。
『いや。このまま食べさせる。こぼすからダメだ』
餓狼は腕を私から離して、お茶碗を取られないようにした。ええ……?
『
私が弱っているのをいいことに、立場が逆転してしまった。
「うん……」
『ほら。あ――ん?』
これは日ごろの私への不満の仕返しかしら……。
「あ、あ――ん……」
ぱくっ! たぶん私も顔が赤くなっている。
なんでそんなに顔を近づけるのだろう。
『……たまにはこんなのもいいな』
「何か言った?」
ご飯を咀嚼するのに精いっぱいだったので、何か言ったのが聞こえなかった。
私にとって拷問のような、ご褒美のような……ご飯の時間だった。
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