第9話 折り紙たちと私


 

 「餓狼。冴羽 護さんのブレスレット用の折り紙のモチーフ、何が良いと思う?」

 私は護さん用の、お守りのブレスレットのモチーフを悩んでいた。

 近くにいた餓狼へ聞いてみてみた。

 

『さあな』

 餓狼は素っ気なく、後ろを向いてしまった。

 「え――。素っ気ない。どうしようかな?」

 他の神社のお守りを身に着けたいなんて、変わった人だと思った。


『瑠璃様、瑠璃様。何をお作りになってるのですか――?』 

『見せて見せて!』

 

 わらわらと、折り紙たちが私の所へ集まって来た。

 何度も言うが皆、私が作り出した折り紙式神たちだ。

 ウサギの折り紙たちが興味深々で見に来た。

 

 正座している私の周りに、手のひらサイズのウサギたちがピョンピョン飛び跳ねている。

 ウサギの子供達は人の形をとっていない。

 二匹だけ二人だけ人の形をとって私に話しかけてきた。

 

 「あなた達も見たことあるでしょう? 季節限定の、神社のお守りのブレスレットよ」

『ああ、あれ? でもまだ、折り紙を折ってないの?』

 二人同時に、おかっぱ頭の上にうさ耳の可愛い子が首をかしげた。


 「うん。どんな折り紙を折ろうかなと思って」

『なら、作ってあげる人を思い浮かべるといいよ――』

『ね?』

 

 ウサギの子達は、人型の子と一緒にピョンピョン飛び跳ねた。

 畳の部屋が一杯になるほどの、たくさんの子ウサギ。

 

 「作ってあげる人を思い浮かべる……。護さんを?」

 私は護さんを思い浮かべた。

 

  ちょっと切れ長の黒目勝ちの瞳……に、整った目鼻立ち。

 背は兄弟とも高く、スタイルが良い。

 護くんは私に対して心配性。

 言葉はわりとキツイけれど、優しくて……。

 あれ? 護くんのことを考えてたら、なんだか顔が赤くなってきた。


 「そうだ」

 冴羽神社の神使しんしは狼だから、狼にしようかしら? 

「ウサギの子らよ。もう、戻れ」

 

 今は夜ご飯も食べ終わり、ゆっくりしているところ。

 折り紙たちの仕事はもう終わっている。

 

『瑠璃様。お休みなさいませ……』

 ピョンピョン跳ねていたウサギの子らは、私の命令に従い折り紙の姿へと戻った。

 一気にウサギの子たちが消えて、少し寂しい。

 

 「私はお風呂に入ってくるから、餓狼も部屋で休んでちょうだい」

『わかった。隣の部屋で待機しているから、何かあったら名を呼べ』

 餓狼は他の折り紙たちとは違い、私の護衛として隣の部屋で待機している。

 もとの折り紙に戻らず、人間の形のまま。(耳としっぽはある)私もよく餓狼のことはわかってないのが事実だ。

 「はい」

 

『瑠璃様、またタエコさんのとこに行っていいかにゃ?』

 最近ねねこは、祖母の折り紙のタエコさんの所で休んでいる。

 私が悪夢を見なくなったから。

 

 「どうぞ」

 私はお風呂へ入りに行った。

 長い廊下を歩いていくと、祖母の折り紙たちとすれ違っていく。

『瑠璃様、お休みなさい』

 「お休みなさい」

 折り紙たちは規則正しく動いてくれる。

 家事を手伝う折り紙たちと、護衛をする折り紙たち。

 昔から重音家ではあたりまえの風景だそうだ。

 

 木で作られた湯船に入って、肩までお湯に浸かると気持ちいい。

 「ふう……」

 私はお風呂で色々考え事をする。……護さんのブレスレットのモチーフは狼にして、色はどうしようかな? 

 男性だし黒とか青、緑に……。

 いけない。――眠りそうになった。

 あんまり長湯をしてると餓狼が様子を見に来ちゃう。全身を洗って、お風呂を出た。


 お風呂場から廊下へ。

 途中、キッチンで飲み物を取りに行き、自分の部屋まで戻ってくると餓狼が部屋の前で待っていた。

 

「ん? 餓狼、どうしたの?」

『これを見ろ』

 餓狼が私に渡してきたのは、人の形の紙。

 「これは……。私のでも祖母のでもない、式神」

『監視用の式神だ。境内に入り込もうとしてた所を切った』

 その式神は半分からきれいに切られていた。この式神を送り込んできたのは誰?


 「……ありがとう、餓狼。いつもご苦労様です」

『いや。……また送ってくるかもしれないから気をつけろ』

 そう言い餓狼は、私の背中を押して部屋の中へ促した。

『もう寝ろ。お休み』

 作業したかったけれど、ここは素直になったほうがいい。

 「うん。お休みなさい」

 餓狼に扉を閉められた。


 多数の式神が境内の監視をしている。

 何かあれば餓狼やねねこ、その他の折り紙に連絡するように命令してある。

 最近ちょっとおかしな人が増えているので、監視は必要だ。

 

 とりあえず……私はもう眠ることにした。

 明日は色々、やろうと思う。

 

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