第8話 冴羽神社の兄弟


  いつものように、神社のお守りなど並べている所をきれいにしていた。

 

 『瑠璃様、追加のお守りを持ってきたのですー』

「ねねこ、ありがとう」

 折り紙の式神、ねねこは働き者だ。

 私が作り出した式神だけど、猫の折り紙でとても可愛らしい。

 ただ見かけによらず、身の軽さを生かした武道が得意な私の護衛だ。

 

 『えへへ』

 ねねこがいてくれて助かったことが多々ある。

 迷子になった時や、誘拐されそうになった時。ほかに数えきれない。

 頭を撫でていたら急に、ねねこが険しい顔になった。


 「やあ! 瑠璃さん、こんにちは」

 ふと顔を上げると、同じ地域にある冴羽神社の兄弟がうちの神社にやってきた。

 

 「こんにちは。ゆずるさん、護くん。なにか用ですか?」

 いくら幼馴染でも他の神社へ来るのは珍しい。

 ゆずるさんが声をかけて、護くんはゆずるさんの横へ並んでいる。あいかわらず無口だ。

 

 「お前、不審者を捕まえたんだって?」

 護くんがいきなり私に話しかけてきた。

 ちょっと不機嫌なのか眉間にしわが寄っていた。

 「おいおい、護。挨拶もなしで……。これでも瑠璃ちゃんのこと心配しているんだよ」

「え」


 護くんが前に出てきて「よけいなこというな」と、兄のゆずるさんに言った。

「捕まえたのは、うちの子……。餓狼よ。私ではないわ」

 

 捕まえたのは餓狼。

 この兄妹は私と同じく神職を目指して勉強中。

 なので私の折り紙のことを知っている。というか、知られてしまっている。

 

 「捕まえたのは式神だろうけど、何かあったら連絡しろって言ってただろ。いくら式神がいても、危ないだろ!」

 護くんは、私を心配してくれてるようだ。

 「そうね。心配してくれてありがとう」

 私は心配してくれたことが嬉しくて、ニコニコと笑った。

 「こ、今度からすぐに連絡しろよ!」

 そう言った護くんの顔は真っ赤だった。

 クスクスとゆずるさんは笑っていた。


 「そういえば……。最近、変な人が増えたみたいだね。気を付けてね」

 ゆずるさんが思い出したように言った。

 「はい」

 ねねこは私の背中側へ隠れてしまった。


 「あ、そうそう! 美味しいお茶菓子を手に入れたから、持ってきたんだった!」

 ゆずるさんが箱に入ったお菓子を手渡してきた。

 時々、美味しいお茶菓子を持って来てくれるので嬉しい。

 「ありがとうございます!」

 ありがたく、受け取る。あとで、皆でいただこう。

 

 「ほら、護。お前の目的を忘れるな」

 つんつんとゆずるさんは護くんの腕をつついた。

 

 「あ」という声をあげて、横を向いた。

「お前の神社のお守りがあるだろう? あの……、数量限定の……」

 護くんが言っているのは、数量限定で季節ごとに頒布している防水加工した折り紙のブレスレット。

 季節ごと違う折り紙の形を折って、ブレスレットの形へ加工している。

 

 「ええ。今、奉製しているところよ。来月に頒布する予定なの」

 まだ奉製し始めたばかり。年、四回頒布している。


 「えっ……」

 護くんから聞こえてきた声。もしかして……。

「もしかして……「そう! 護はそれを目的にきたんだ」」

 私の話の途中をさえぎってゆずるさんは話をした。

 

 「また、よけいなことを言う」

 「事実だろ?」

 

 兄弟が口喧嘩しそうになり、私は二人の間に割り込んで止めに入った。

 「ちょっと! ここは神社の境内です! お静かに……!」

 「「あ!」」

 ピタリと口喧嘩がが止まった。

 「すみません……」

 「すまない」

 二人はおとなしく私に謝ってくれた。


 「季節限定のブレスレット、ですか? ご自分の所のお守りは……」

 冴羽神社のお守りも御利益があるのに、なぜうちの神社のお守りを?

「だめか……?」

 「……!」

 

 いつもと違って悲しそうな顔をした。

 そんな悲しそうな顔にさせたら、罪悪感を覚える……。

 「で、では。特別にお作りいたしましょう。時間がかかりますが良いでしょうか?」

 これも何かの縁。特別に作ろうと思った。

 

 「ほ、ホントか!?」

 「ひゃ!」

 喜んだ護くんが、私の両手を取って握った。

「楽しみにしている!」

 顔が近くてびっくりする。

 少し顔を上気させた護さんは目鼻立ちが整っていて、冴羽神社兄弟のファンクラブがあるくらいだ。


 「あ、もしかして。どなたかへプレゼントでしょうか?」

とても女性に人気があるので彼女さんがいてもおかしくない。

 その方へプレゼントなら女性向けに作らなくてはいけない。

 

 「プレゼント?」

「彼女さんへのプレゼントなら、女性向けに作らないといけませんから」

 護くんは急に握っていた手を下ろして、はぁ……とため息をついた。

 「あはははははは!」

 ゆずるさんが突然、大笑いをした。


 「身に着ける! よろしく!」

 そう言い、護くんは私の手を離して帰っていってしまった。

 「では瑠璃ちゃん。またね」

 くくっ! と笑いながらゆずるさんも帰っていった。

 

 「あ! お茶菓子、ありがとう御座いました――!」

 二人に手を振って見送った。


 「ねねこ。いただいたお茶菓子を、皆でいただきましょうね」

 私はうしろにいる、ねねこへ話しかけた。冴羽神社の兄弟と会うとなぜか機嫌の悪い、ねねこ。

 

『瑠璃姫様は、鈍いにゃん……』

「え? 何か言った?」

 何でもない。と言いねねこは走り出してお家の中へ入っていった。

 ねねこの言葉はよく聞こえなかった。

 

 護さんのブレスレットを作らなきゃね……。

 でもなんで、うちのブレスレットなのかしら?

 私は不思議に思ったけれど、幼馴染なので特別の物を作ろうと思った。

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