第4話 餓狼と近所へお買い物
『買い物へ行くのか?』
玄関で靴を履いていたら、私の
「うん。料理酒がなくなったから買いに行くわ」
お財布は持ったし、忘れ物はない……よね。
手提げかばんの中を確認して、玄関の扉を開けた。
『俺も行く』
「え」
餓狼は外で歩いても目立たない普通の服装へと、変化の術を使った。
『これなら一緒に歩いても、大丈夫だろう?』
「うっ……」
別の意味で餓狼は目立つ。
でも本人の自覚がないので黙っている。
『ん? 変か?』
背は高いし、なかなかの美丈夫だ。誰も
「大丈夫……だよ。耳としっぽは、隠してね?」
『わかった』
服や姿も変化の術で変えられるし、うらやましい。
ふっ……と、狼の耳としっぽが消えた。
正確には見えなくしたのだろうけど。私としては餓狼の狼の耳やしっぽは、気に入っている。
『ねねこに、見つからないうちに行くぞ』
「う、うん」
私のもう一人の
可愛い猫の女の子で私が大好きらしい。
ご近所のお店へ行くのに二人も
『あ――! お出かけするの!?』
しまった。ねねこに見つかった。
軽い、猫の足取りでこちらへ近づいてきた。
「ちょっとご近所までだから。待っていてね、ねねこ」
『え――!』
ぷう! と頬を膨らませて機嫌を悪くした。
そんなねねこも可愛い。
私はニコッと笑いかけて「かつおぶしを買ってくるからね」と言った。
するとみるみる上機嫌になり、ニコニコと笑って私達に手を振った。
『お家で待っているね!』
単純で助かる。いつもより良いかつおぶしを勝ってこよう。
「行ってきます」
『いってらっしゃーい!』
ねねこに送り出されて私は、餓狼とお買い物へ出かけた。
「近所なんだから、一人でも大丈夫だよ」
餓狼をはじめ、私の折り紙たちは過保護だ。別に猛獣がいるわけでもないのに。
『お前は、自分のことを知らなすぎる』
私の横で並んで歩いている餓狼が返事をした。……自分を知らなすぎる?
「どういう意味?」
『そのままの意味、だ』
そう言っていつものように餓狼は黙ってしまった。
口数の少ない餓狼は、ちゃんと説明をしてくれない。
長い付き合いの折り紙 餓狼とは、お互いの性格を知っているので気やすいけれど、深く問わない。
まるで本当の、生きている人間みたいな餓狼。
私自身が作り出した
しばらくお互い無言で歩いて行くと、目的のお店が見えてきた。
餓狼は何も言わずに姿を消した。
「あ……」
「あれ? 瑠璃ちゃんだ。お買い物?」
前から歩いてきたのは幼稚園からの幼馴染。
私の家から離れた場所にある、
物腰は静かだけど社交的な長男の、
弟の|冴羽
「はい。切れているものがあったので」
私が返事をすると、ゆずるさんはニコニコと私を見て微笑んだ。
護くんはフィ……と目を反らした。
内心ムッとしたけど、いつものことだ。
「……通り魔が出没してるらしいから、一人で出歩くなよ」
護君は素っ気なく言った。私は通り魔が出没しているなんて知らなかった。
「通り魔が、出たの?」
私は護くんに聞いた。通り魔がいるなんて怖い。
「昨日の夜に会社帰りの男性が襲われたと、テレビのニュースや町内会の回覧板で見たよ。腕にケガをしたらしいが軽症らしいね」と、ゆずるさん。
「まだ捕まってないから気をつけろ。送っていく」
グイと私の腕を掴んで歩き出したのは、
「えっ!? ちょっと待って」
歩く速度は護くんの方が早いので、つまづきそうになる。
「護! 瑠璃ちゃんより歩くの早いのだから、合わせてあげないとダメだぞ」
ゆずるさんは護くんの肩を掴んだ。護くんの勢いをとめた。
「あっ! すまない……」
護くんはバツの悪い顔をして、私の腕をパッと離した。
悪気があって私のことを引っ張ったのではない。
「お店はすぐそこだし、大丈夫。ありがとう」
私には餓狼がついてきてくれてるから心強いし、大丈夫。
胸のポケットにある折り紙を撫でた。
「……そうか。でも困ったときは、俺達に連絡しろよ」
携帯電話は持って来てるよな? と護くんは聞いてきた。
さすがに携帯電話やお財布は忘れずに持って来ている。
「持っているよ。うん、ありがとう」
護くんは昔から私に対して心配性だ。私があまり強くない性格なので、見ていられないのだろう。
「まあまあ。瑠璃ちゃんも、もう大人なんだからあまり心配しても迷惑だよ。じゃあ、またね。瑠璃ちゃん!」
ゆずるさんは護くんの背中を押して歩き出し、私と別れた。
護くんは、何か言いたそうな顔をしていたけれど。
『行こうか』
「わっ!」
餓狼がまた元の姿になって、私の横へ姿を現した。
いつも予告なしで現れる。びっくりしてしまう。
「あのね、通り魔が出没したって……」
怖くなってしまった私は、餓狼の腕の服を親指と人差し指で摘まんだ。
『ああ。知ってた』
「知ってた?」
しれっと餓狼は言った。だから私についてきてくれたようだ。
私を怖がらせないように、黙ってついてきてくれたのはありがたかった。
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