第3話 重音(かさね)家の人と折り紙たち


 「あっ……!」

『危ない』

 廊下で何かにつまずいて、転びそうになった私を餓狼がろうが支えてくれた。


 ガシッと私を力強く支えた腕は、太くたくましい。

「あ、ありがとう。餓狼」

 足元を見ると、クスクスと笑った小さな手のひら位のネズミの折り紙式神が通り過ぎていった。

 餓狼が支えてくれたので転ばずに済んだ。

 

 『しっかりしろ。折り紙式神に、なめられるな』

 餓狼の言葉がツキンと刺さった。

 その言葉を聞いた猫の折り紙式神のねねこは餓狼にシャー! と唸り、怒った。

 

 『そんな言い方、キツイではないですか!? 瑠璃様は……「いいのよ、ねねこ」』

 私は、ねねこの言葉をさえぎった。餓狼の言葉は真っすぐで、嘘はない。

 

 私を見ている二人に話しかけた。

 「餓狼の言う通りよ。しっかりしないと危険だし、皆に迷惑がかかるわ」

 手を強く握って顔を上げて話をした。

『姫様ぁ……』

 ねねこは私が昨日、眠れなかったのを知っているので餓狼に言ってくれた。

 だけど餓狼の言う通り、折り紙にいけない。

 

 「餓狼、ねねこ。ありがとう」

 私は二人から離れて、掃除をしようと外へ向かった。


 

『お早うございます、瑠璃様』

祖母の猿の折り紙式神、タエコさんがペコリと頭を下げて挨拶してきた。

 私より早く境内の掃除をしている。

 

 「お早うございます。タエコさん」

頑張ってぎこちない笑顔をし、挨拶した。

 皆と暮らしていて笑顔が足りないと言われて頑張って笑顔を作っている。

 どうしてもまだ色々と考えてしまう。

 

『お早う! 瑠璃様――!』

 『瑠璃様、お早うございます』

『お早う。落ち葉がたくさんあるから、きれいにしておくれ』

あちこちから声がかかる。

 姿の見える者もいるし見えないモノもいる。

 

 「お早うございます。きれいにお掃除しますね」

朝の日課、神社の外と中の掃除。

 皆と手分けして掃除を毎日している。


 シャッ、シャッ! と竹ぼうきで掃除すると、きれいになるばかりではなく気持ち的にも清々しくなる。

 無心になって掃除をした。

 「瑠璃さ――ん! ご飯ですよ!」

「あ、は――い!」

 歌利那さんに呼ばれて顔を上げると、境内がキラキラと輝いてきれいになっているのに気が付いた。

 「急がなくちゃ……」後片付けをして中へ入った。


 「いただきます」

「いただきます……」

 「いただきます!」

 祖母、私、歌利那さんと、折り紙たちが手伝って朝ご飯の用意が出来た。

 五穀米にお野菜の煮物。卵焼きに、ほうれん草のお浸しとお味噌汁。旬の果物少し。

 朝からきちんと食事をする。

 祖母の家に来て学んだ、朝昼晩のきちんと食事をするということ。

 

 「味付け、薄いかしらねぇ?」

 祖母が若い私たちの味覚を気にして話しかけてきた。

 「美味しいです」

 野菜たくさんの朝ご飯。ちょうどいい味付けだった。

 

 歌利那さんも、うんうんと頷いて言った。

 「美味しいですよ! ね? 瑠璃ちゃん!」

 私も頷いて微笑んだ。出汁がきいていて美味しい。


 「ああ、二人のお口に合って良かったわ~」

 ホッとした顔をした祖母。私の母は味の濃い食べ物と辛いものが好きだった。

 子供の頃、母の料理はあまりたくさん食べられなかった。それを気にしてくれているのだろうか。

 

 「もっと、鈴子おばあちゃんのお料理を教わりたい」

 優しい祖母の味付けが好きだ。

 自分もこんな美味しいお料理が作れるようになりたい。

 

 「まあ! 嬉しいことを言ってくれますね。良いですよ、みっちり教えましょう!」

 そう言い祖母は腕まくりをした。

 「あ――。瑠璃ちゃん。鈴子さんを本気にさせたね? しーらないっと」

 歌利那さんはおどけて言った。

「でも、瑠璃ちゃんの作るお料理は上手だよ! カフェの評判、良いんだから!」

 カフェの評判がいいと聞いて安心した。


 朝ご飯を食べて片付けも終わり、お茶を飲んでまったりとしていた。

「そういえば、神社カフェなんだけど……。予約が増えて満杯で、もっと日数を増やして欲しいって要望がきてる」

 神社カフェ経営担当の歌利那さんが、熱いお茶をすすりながら言った。

 

 「え」

 まあまあ! ……と祖母が嬉しそうに喜んだ。

 「あと、うちの神社カフェ【ご利益】あるって評判なんだけど。瑠璃ちゃん?」

「あ……」


 「口コミに『失恋した子とカフェで食事したら折り紙をもらって元気が出て、素敵な男性と出会えました。ありがとう御座います』とか、その他ご利益があったとか書き込みがあったわ」

 二人は私をジッと見ていた。

 

 「……え、私?」

 焦る私。

 「自覚ないのかな……?」

 歌利那さんはお茶を美味しそうに飲んだ。

 

 「重音家一番の能力が、あふれちゃってるわね……」

 鈴子おばあちゃんは心配そうにつぶやいた。

 「あ、あと悩み事相談したいって書き込みが多くって……。どうする? 瑠璃ちゃん」


 困った……。

 評判なのはいいけれど、悩み相談? あまり私は目立ちたくないのだけれど……。

 でも少しでも、悩みのある人が元気になってくれたなら嬉しい。

 

 「瑠璃の姿をなるべく見せたくないし、見られたくないだろうから姿を見せない感じだったらいいんじゃないかい?」

 鈴子おばあちゃんが名案を出してくれた。

 

 「瑠璃ちゃんが大丈夫ならお願いしたいけど……。もちらんセキュリティをはしっかりと守らせてもらいます」

 歌利那さんはそういった防犯用品やパソコンが得意で、折り紙たちと別で神社のセキュリティを担当している。


 「自分が、人のため役に立てるのなら……」

「じゃ、決まりね!」

 神社カフェの別室のようなところに、悩み相談処ができた。


 

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