第2話 重音 瑠璃(かさね るり)
『瑠璃様、お食事の下準備をしておきました』
私に話しかけてきたのは、祖母が作り出した
重音家では祖母と私が作り出した、複数の
「ありがとう」
礼を言うとお辞儀をして祖母の部屋へ入っていった。
「ふう……」
自分の作り出した折り紙じゃない、複数の折り紙たちにまだ慣れない。……というより大人数で暮らすことに、
私の名は、
苗字が珍しいので、よく由来など聞かれたが、母は家を飛び出した人なので実家のことを話したがらなかった。
時々
祖母はそんな私に、折り紙の楽しさを教えてくれた。
一枚の紙が何度か折っていけばチューリップの花になったり、今にも飛んで行きそうな
「それはね、重音家に代々伝わる【折り紙師】の能力なのよ」
優しく祖母は教えてくれた。
幼かった私は戸惑うことなくその能力を受け入れられた。
「【折り紙師】? ……いいね」
そう言ってたくさんの折り紙の鶴を、空中へ飛ばして祖母に見せた。
部屋中に舞う鶴の折り紙。私は祖母の驚いた顔を見て、私は微笑んだ。
「でもね、瑠璃。その力は他の人に、面白半分に見せてはダメよ」
「……はい」
祖母の少し寂しそうな顔を見て、素直に返事をした。
仕事で忙しい両親より、祖母の方が好きだったから。
高校を卒業して私は一人暮らしを始めた。
早く独立したくて進学ではなく働くことにした。
でもあまり人付き合いの上手でない私は、会社で孤立していた。
嫌がらせや、他人の仕事を押し付けられる等のことをされていた。
その矢先、両親が事故で亡くなった。
私は抜け殻のように何もできなくなってしまっていた。
両親とはあまり接触はなかったが、いつか私を気にかけてくれてくれると頑張っていた。
しかし、それもできなくなってしまった。
「私って……」
泣くことも、動くこともできなかった私に代わって、祖母や親族がお葬式を取り仕切ってくれた。
来てくれた祖母が私に「一緒に暮らしましょう」と言ってくれた。――そして今に至る。
神職の勉強をしながら祖母の神社で巫女として仕事をしている。
そして境内にある【神社カフェ】の手伝いもしている。
「瑠璃ちゃん! カフェの、ランチ用お料理をお願いできるかな?」
月に三回だけ営業する神社カフェ。そこの料理担当をしている。
「はい! 今、行きます」
私はカフェで料理を担当している。
美味しいと評判になってきている。喪失感が強かった私は少しづつ、やる気を取り戻してきていた。
【神社カフェ おりづる】
店長で従姉妹の
「瑠璃ちゃん! お買い物ありがとう!」
元気で明るい歌利那さんは、このカフェを取り仕切っている。
色々なアイデアを出してお客さんを楽しませてくれている。
「いいえ。ランチ用のお料理を作りますね」
私はカフェのキッチンへ入った。神社カフェなので体に良いバランスの摂れた献立を考えている。
歌利那さんと相談して献立を決めている。
今日予約のお客様、お二人。
「わあ! 美味しそう!」
「色どりもきれいだし、体に良さそう」
仲の良いお友達同士、運んだお料理を褒めてくれているのが聞こえてきた。
いただきます! という声が聞こえてきて、お料理を作った者としては緊張の時間だ。
私はキッチンでエプロンの裾を握りしめていた。
「ん――! 美味しい!」
「優しい、味だね」
その声を聞いてほっとした。
無言だった場合、美味しくないという答えだから、美味しいと言ってもらえて良かった。
「元気出しなよ」
「うん……」
片方の子に「元気出しなよ」と言っているのが聞こえてしまった。
なにかあったのだろうか。知り合いでもないので聞けずにいた。
その後も「美味しい!」と何度も言ってくれていたので、満足してもらえたようだった。
デザートまできれいに食べ終わり、お会計の時。
私は歌利那さんへお客様に渡してほしいと頼んだ。
「こちら、どうぞ」
渡してもらったのは、ガーベラの花の折り紙。
「わあ……! 可愛い」
「嬉しい。……なんだか元気がでる」
ガーベラの花言葉は「希望」。
元気のなかったお客さんが、元気になって欲しくて心を込めて折り紙を折った。
「ありがとうございます。……私、失恋しちゃって。落ち込んでましたけど、美味しい料理と店員さんの優しさに元気が出ました!」
そう言って笑ってくれた。
「誘って良かった! ありがとう御座います!」
二人は元気よくカフェから帰っていった。
「良かった……」
私は元気のないお客さんが、笑顔で帰っていったので嬉しかった。
「ほんとは、あまり瑠璃の折り紙は渡したくないけど……しかたがないか」
歌利那さんは、ふぅ……とため息をついた。
「あっ……。忘れてた」
「ん」
私の折り紙は特別。
本当は門外不出。でも少しでも、元気になってくれたなら私は嬉しい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます