【折り紙師】かさねと「神社カフェ おりづる」
厘
第1話 恐竜の折り紙
私は買い物を終えて交差点で信号待ちをしていた。その時に焦ったような女の人の声が聞こえた。
「つかさちゃん! 待って!」
後ろから、タタタタタタ! と足音がして振り向くと、幼稚園ぐらいの男の子が勢いよく走ってきた。お母さんから離れて一人、先に走ってきているようだ。
目の前は赤信号。男の子は止まる気配がない。
「赤信号だよ。止まろうね」
そっと腕を男の子の前に出して、赤信号の道路へ走って行くのを止めた。
ポスン……! と勢いよく私の腕に飛び込んできた。
「ダメじゃない、いきなり走って行かないで!」
ハアハアと息を荒くして男の子のお母さんが追いついて、男の子の腕を掴んだ。
やんちゃ盛りの男の子は怒られて、シュン……としていた。お母さんは大変だ。
「ありがとうございます! 助かりました」
男の子のお母さんは私にお礼を言った。
「いえ。……恐竜が好きなの?」
男の子の靴下やカバンに、恐竜のイラストのワッペンやキーホルダーがあったので話しかけてみた。
すると嬉しそうに「うん!」と返事があった。
私はカバンから折り紙を取り出して男の子へ渡した。
「わあ! 恐竜の折り紙だ!」
目を輝かして、渡した恐竜の折り紙を両手で持って嬉しそうに言った。
「いいのですか?」
男の子のお母さんは遠慮がちに言ったので、私は笑顔で頷いた。
「赤信号では必ず止まってね? 恐竜さんが
「赤信号で止まらないと、恐竜さん泣いちゃうの?」
男の子は見上げて聞いてきたので、私はしゃがんで男の子の目線で話しかけた。
「そうだよ。必ず、赤信号で止まってね?」
「うん、わかった!」
キュっと恐竜の折り紙を握って、私に笑顔で返事をした。
「約束ね!」
男の子は私に手を振って、お母さんはお辞儀をして青信号を渡っていった。
「あ! また! 待ちなさい!」
先ほどの男の子がまた、お母さんの手を離して一人で走っていった。
周りの人達も危ないと思ってその男の子を目で追った。
「危ない!」
周りの大人たちが男の子を止めようと動き出した。
進んだ先でまた赤信号。男の子は止まらない。
「つかさ!」
お母さんが腕を伸ばして止めようとするけど、間に合わない。
「危ない!」
周りの大人たちが男の子を止めようと手を伸ばしたとき、急に後ろへ引かれて男の子が止まった。
「え?」
「あれ?」
周りにいた人たちは急に、不自然に男の子が止まったので不思議に思ったけれど、道路へ飛び出さなかったので胸をなでおろした。
「つかさちゃん!」
大きなトラックが通り過ぎて男の子が無事だったので、皆がホッとした。
「つかさちゃん! あれほど危ないって言ったのに……! ダメで……「恐竜さんが助けてくれたんだよ!」」
涙目のお母さんが男の子を叱ろうとしたら、男の子がニコニコとお母さんへ興奮気味に話しかけた。
「え? 恐竜さん?」
お母さんは困惑顔で男の子へ聞き返した。
「そう! 恐竜さんが僕を助けてくれたの! 危ないって言って、僕を引っ張ってくれた!」
お母さんも周りの人達も困惑していた。
「そ、そうなのね? ……もう、走っていってはダメよ」
そう言い、お母さんは男の子を抱きしめた。周りの人達もそれを見て安心して離れていった。
「よくやったわ。このままお願いね、
私は周りに聞こえないように小声で、男の子に渡した折り紙へ礼を言った。
「【折り紙師】 か……」
それは我が
軽くて扱いやすい紙(折り紙)を主に媒体としている。能力が特に優れたものは自由自在に操れる。
まさか私が、重音家の一番の能力者になるとは思わなかった。
しかも【折り紙師】のことをちゃんと聞いたのが最近だったので、自覚なんてない。
「まあ。徐々にやってけばいいよ」と祖母は言ってくれたけれど……。
「ただいま戻りました……」
賑やかな商店から少し歩いた所にある神社が、私の暮らす
重音家の能力がなかった私の母は、
そして父と出会い、結婚して私が生まれた。
両親は仕事が忙しくて私はほとんど、かまってもらえずにいた。
私を預けるところがなくなると、祖母のいる神社に
でもちゃんとした衣食住をさせてもらったので居心地が良かったし、祖母は優しかった。
【折り紙】を教えてもらったその時に、能力が開花した。
褒められて嬉しかったし、寂しかった私のお友達が折り紙だった。
『姫様! お帰りなさいませ!』
『お帰りなさいませ、姫様』
玄関へ向かって走ってくるのは、人の形をした猫と狼。
私が子供の頃、お友達が欲しくて【折り紙師】の能力で作り出してしまった折り紙たち。
初めは猫と狼の折り紙だったのに、命を吹き込み人間の形になってしまった。
「ただいま。ねねこ、
なぜか二人は、私のことを「
『姫様は、姫様なのに……』
シュンと項垂れたのは、ねねこ。
小学生低学年くらいの大きさの女の子で猫耳としっぽがある。
『そうだ。姫様は、姫様だ』
私を姫様扱いする狼の耳としっぽの男性は
背は高く、180センチくらいはある。二人とも自在に、大きさは変えられるようなのだが……。
ガロウは、この二十歳くらいの年齢の体格の良い姿が本体なのだろうか。
姫様呼びはやめてと、何回言ってもやめてくれない。
なにかこだわりがあるのか。
この神社には、祖母と私が作り出した【折り紙】たちが住んでいる。
言い方を変えると【折り紙】たちを
そんな【折り紙】たちと、祖母と
両親を事故で亡くして、生きる気力を無くした私を助けてくれたのだ。
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