第5話

「パー、ゴーレムのコアをここへ持って来なさい」

 パーというのは見張りをしていたコボルトのことだろう。コボルト族の名前は短いのが特徴らしい。パーはまた洞窟の奥へ行き、それほど時間がかからずにゴーレムのコアを持って戻ってきた。コアの大きさは人の手のひらほどで、仄かに紫色に光を帯びている。

「このコアを使えば奥にいるガーディアンゴーレムと契約できるでしょう。それにしても召喚士のジョブを持っている人と会ったのは初めてです」

「たしかに召喚士のジョブ持ちはかなり珍しいかもしれません。では行ってきます──」

 ダンジョン手前の扉の前にガーディアンゴーレムはいた。フルプレートの鎧を身にまとい、大きな盾を持っている。鎧や盾につけられた模様が青く光っている。動力源は不明だが動ける状態なのは確かだ。青紫色に光っている目がこちらを見ている気がするが、襲ってくる気配はない。

 ロイは渡されたガーディアンゴーレムのコアを手のひらに載せて腕を前に伸ばす。

「ガーディアンゴーレムよ、俺に力を貸してくれ」

 するとガーディアンゴーレムがこちらに向かって歩き出し、ロイの目の前で片膝をついて止まる。

 手に持っていたコアがガーディアンゴーレムの胸にあるくぼみに向かっていき、胸の中に吸い込まれていく。ガーディアンゴーレムが一瞬光ったかと思うと、青い光となってロイの体に全て取り込まれていく。契約完了だ。後ろで一部始終を見守っていたコボルト族たちから歓声が上がっていた。そして奥にあった扉がゆっくりと横に開き始める。

 ダンジョンだと思われていた場所には大きな部屋が一部屋あっただけで、それ以外にはその部屋の中央にある台座の上にこれまで見たことがないような光を放つ魔石が置かれているだけだった。

「この魔石、僕が作ったものに使えるかもしれない」

 そう言ってゲーデルは自分が作った謎の発明品を取り出した。

「ここでやってみるのかい?」

「うん、やってみよう」

 ゲーデルは魔石が置かれている台座のところまでいって、魔石と発明品の結合を始めた。

 少し時間がたってからゲーデルが「よし」と言って発明品の起動を開始すると、発明品の水晶がはめ込んである場所から光が発せられて部屋の石の壁に当たり、次第に広がり始める。

 石の壁に当たった光は広がって映像として見えるようになり、どこかの国の様子を映し出しているようだった。人の町が人の姿をした魔物、魔族に襲われて、そこに住んでいる人は殺され、住んでいる家も燃やされている光景が見える。どこの街かと思いながら見ていたが、そこはラモーネの街だということがわかった。一度だけ見たことがあるラモーネの冒険者ギルドのギルド長が映像に映し出されていた。髪の毛の大部分が白髪になっていることを考えると、今から十年から二十年後といったところだろうか。ギルド長は近くにいる冒険者たちに何か指示を出しているが音声がないので何を言っているかまではわからない。

 それからいくつかの街や都市の映像が流れていったが、どこもひどい惨状だった。

 また映像の場面が変わり、今度は見たことがない森の奥深くの場所が映し出されていた。鎧を着た小柄な竜と人型の木、トレントだろうか。そして女性のエルフがいた。画面がゆっくりと動き、一人の魔族が見えた。その魔族とトレントが何か会話をしている。

 映像はそこで途切れた。

「これは一体何だったんだ……」

「もしかするとこれは未来の映像なんじゃないかな……」

 心の中ではそう思っていても理性が受け入れることを拒んでいたことをゲーデルはそのまま言ってきた。そうなのだ、この映像が真実かどうかはわからないが、未来の映像を映し出していることは確かだった。

「そこの映像の後半に映っていたのは世界樹の主とその護衛の騎士竜ファーディンとエルフのリーリエルだったようですね」

 ロイたちの後ろから一部始終を見ていた長老が話しかけてきた。

「知っているのですか?」

「ええ、といっても聞いた話なので実際に会ったことはありません。ここからさらに北へ向かった先にある始まりの地グランリーフという地域があります。そこでは竜やエルフなどの多種族が世界樹の主『レントカラン』の統治のもと共存しています」

「そこへはどうやって行くんですか?」

 得体の知れない場所だと思ったが、行ってみなければ何もわからない。それにさっきの映像にあった、ラモーネの襲撃についての手がかりがわかるかもしれない。

「グランリーフはここから北にありますが、そのまま北へ行くとルベマント山脈という非常に険しい山脈があります。そこを超えていくというのは難しいでしょう。そして、ここから北西にあるロルダという街があり、そこからグランリーフ行きの船が出ていることは出ているのですが、海が荒れたり、魔物が出たりとこちらもまた難しいですし、運賃も高いです。あとは、ここから東に行ったところにある都市オルデンからごく稀に竜の往来があると聞いたことがあります。おそらくオルデンとグランリーフへの行き来をしているのでしょう。グランリーフへ向かう候補としてはこんなところでしょうか」

 長老の話を聞いてグランリーフへ行くにはどの候補からも難しいことがわかった。

「グランリーフへ向かうにはどれも難しそうですね……。とりあえずの候補は船ですかね。一度ラモーネの冒険者ギルドに帰って商人を探してからギルドの依頼をこなして資金を稼いで、船でグランリーフへ向かうことを目指すことにします」

 難しいかもしれないが、船で行くのが一番現実的な気がする。

「僕もそれでいいと思う」

 ゲーデルが賛同してくれた。

「そうですか、今日は珍しい召喚士の契約のみならず、未知の映像を見ることができて、なんだか自分たちの運命が動いたような気がしています。それでは交易の件どうかよろしくお願いします」

 洞窟を通り入り口ところまで来ると、多くのコボルトが見送りに来ていた。人から見たら魔物とあまり変わらないように見えるが、今回のことで、見た目で判断できないこともあると学ぶことができた。それもゲーデルの発明と準備のおかげだと思った。

「ゲーデル、ありがとな」

「なんだよ、急に」

「いや、なんでもない。さあ、帰るぞ」

「うん」

 ロイたちはラモーネの街へ向かった。

『称号〈コボルト族の信頼〉を手に入れた』

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2026年1月10日 13:26
2026年1月11日 13:26

始まりのロードガルド~世界樹と魔界樹~ 角ころ @cornered3

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