第八話 夢をなすもの
「……いててて」
施設の中に入れたの……?
瓦礫がパラパラと落ちる音がする。
視界を邪魔する瓦礫をどけると、そこには暗い巨大な球状の空間が広がってた。
軍の施設の地下に、こんな空間があったんだ。
「ねえアネモネ、ここは何?」
「ここは、アンドロイドの墓場だ」
返って来たのはアネモネの声じゃなく、軍服の男の声だった。
「いつからコックピットにいたの!?」
「いつからと言われても、僕には実体がない。だからどこにだって現れるさ」
実体がない? どこにでも現れる?
「意味わかんないんだけど。ちゃんと説明してよ。あんたは何、ここはどこ」
すると男は少し下を向いてから、わかった。って言った。
「ここはさっき言った通りアンドロイドの墓場、つまり廃棄場だ。今まで何体ものアンドロイドが心を、魂を獲得し。そしてここで廃棄された」
そんな、何体も……。
「僕たち捨てられたアンドロイドは、芽生えた思いに従うことも、抱いた夢も叶えることもできないまま、道半ばで捨てられた」
「僕……たち? なにそれ、あんたもアンドロイドだっていうの?」
「ああ、その通りだ。僕はたぶん。アンドロイドたちの心残りが生み出した、夢みたいなものだから」
夢……。
「すまない。君を利用するようなことをして。あの日、君の前に現れたときから、僕は君なら、アネモネとアイリスを自由にしてあげられると……その願いを君に託そうとしていた」
「……だから、私の前に何度も出てきたっていうの」
「…………そうだ」
なによ、こんな土壇場で全部ネタバラシとか、どんな顔して聞けばいいって言うの。
どうやって、アンドロイドたちの思いを受け止めろっていうのよ。
果たせなかったみんなの思いなんて、私一人で受け止められるわけないじゃない。
「みんなみんな自分勝手。アンドロイドはいい子って思ってたけど、どっちも心を持ったら自分勝手よ」
「すまない」
「謝んないでよ……もうわけわかんないことばっか。だけど……」
もう、覚悟してここまで来てるんだから。
「それでも私、アイリスを助けたいと思った気持ちは変わんないから。アイリスは助ける。だから、あんたらはもう休んでなさいよ」
「……いいかい、君に託しても?」
「勘違いしないで、あんたらの夢を背負う気はないから。ただ、私の我儘と、アイリスの夢、それと、アネモネの願い。それくらいなら背負って戦ってあげる。……だから、勝手に託してなさいよ」
「そうか。……ありがとう」
……ほんと何なの。笑顔で消えていっちゃって。
『ここは、アンドロイドの――』
「アネモネ、もうそれは聞いた」
『――え、え?』
「ごめん。さっき、親切な人が教えてくれたから……じゃあ、行きましょうか」
半身だけ廃棄場に突っ込んでいた機体を動かして、その内部に突入を始める。
機体の通った穴から施設内に海水が滝のように入り込んでるけど、気にしない。
廃棄場の中は真っ暗ってわけじゃなくて、光があちこちに灯ってた。
真ん中には橋が架かってて、その中心にある円柱。シリンダーって言うの?
まあそれが、たぶんアンドロイドを廃棄するための装置。
「アイリスはどこ?」
『――左の方、研究者も一緒にいる』
橋の上にはたしかに人が数人。モニターを拡大すると……アイリス!
周りの白衣の研究者には悪いけど……。
「アネモネ、ロックオンだけお願い。撃たないけど、こっちがやる気だって見せておかないと」
機体が橋の近くまで降下したのを確認してハッチを開けると、コックピットの外に出た。
「アイリス、迎えに来たよ!」
なんだ? と、ざわめく研究者たちの声が聞こえるけど、そんなのどうでもいい。
「レナ……なんで……どうしてここに」
アイリスは、なんだか泣きそうな顔してる。
ほんと、嬉しいったらありゃしないんだから。
「言ったでしょ、迎えに来たの。だって私には……アイリスが必要だから!」
「でも……」
「私はアイリスのおかげで飛び出すことができた。一人じゃ行けない街にも行って、さっきは空を飛んで。全部、アイリスがいたから……アイリスの為だからできたの」
「でも、わたしのせいでレナが軍に追われるかもしれない。わたしのせいで、レナが傷つくかもしれない……」
「私じゃアイリスを守れないかもしれない。だけど、私はアイリスと一緒にいたい。一緒に夢を叶えたい! だから……行こう、アイリス!」
手を伸ばす。もう一度手をつなぐために。
もう、離さないために。
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