第六話 夢のはじまり
―Do the Android Dream of the Girl? Episode6 : Thrice Upon A Time―
「やっぱりあなたも来たんだ」
って、軍服の男に言うと、男はくすりと笑った。
「三度も会えばわかるってものか」
「そりゃ毎回こんな霧見せられたらね」
ほんと何なの、この霧。幻覚? それとも夢とか?
「それで君は、どうしてここに来た。あれだけ忠告したはずだが」
「それでも救いたいなら、って言ったのはあんたでしょ」
「……そうだな。だが、君はどうして救おうとする。君に何ができる」
私一人で何かができるなんて、思ってない。
「私一人でどうこうできる事じゃないのは分かってる。だけど、アイリスがいたから今の私がいる。アイリスが連れ出してくれたから、私はどこにも行けないわけじゃないんだって。私の立っているこの場所は、私の上のこの空は、決して届かないものなんかじゃないって、そう思えた、信じられた」
「それは君の過大評価じゃないか?」
「そうかもしれない。……だけど、アイリスはやっとの思いで外の世界に飛び出したのに、私の目の前で自由を失って、また施設に。それできっと廃棄される」
「それが君に関係あるのか」
「ある。つい昨日会っただけ。ちょっと話しただけだけど、私は彼女の心を知ってる……その心に突き動かされた。だから私は、アイリスを助けたい。……アイリスと一緒に、夢を叶えたい」
「それがもし、彼女の思いを無下にするものだとしてもか?」
「私はアイリスの事をまだ全然知らない。だけど、あの子が最後に言った言葉を、私は忘れてない。「もっと、レナと遊びたかったな」って。私は、その言葉が本心だって信じてる」
「だから戦うと? 軍を敵に回せると? 君は全てを失うことになるかもしれないんだぞ」
「別に、私には何もない。アイリスとの思い出以外に、大事にしたいと思えるものなんてない」
「……そうか。だったら行くといい。アネモネが、きっと力になってくれる」
アネモネって……アイリスが言ってたアンドロイド?
急に霧が晴れて、目の前には昨日見た、あの謎の白いMFがいた。
「あなたは昨日の……。あなたがアネモネ?」
『――そう』
その声は、物理的な音じゃなく、頭の中に直接聞こえてきた。
それに、昨日の甲高い音と違って落ち着いた、それでもってアイリスと同じように、少し幼い声だった。
その白いMFは、全身の装甲は白くて、所々に緑のラインが走ってる。狐の耳のように尖った二本の角があって、目から続いた光のラインが角の先端まで伸びている。
やっぱり軍の量産機じゃない。私だってそんな詳しいわけじゃないけど、こんなMFはなかったはず。
近くから見てみると、なんだか不思議。
昨日の戦いでは、怖い印象だった。
だけど、優しい暖かさを感じた。
じゃあ昨日の、あの凄い音は、……アイリスを連れ戻そうとする軍への怒りだったり? アイリスに心があったみたいに、アネモネにもあるのかもしれない。
でもなんでアネモネはMF? アイリスは人の姿だったのに。
「あなたはアンドロイドなの、MFなの?」
『――わたしも、アンドロイドだった。だけど、アイリスを逃がすためにこの
アイリスを逃がすため、か。なんだ、私と一緒なんだ。
「そのLMF-0?って、軍のじゃないんでしょ?」
『――そうだね。軍の機密で……君には言ってもいっか。昔から軍で保管されてたブラックボックス。言ってしまえば軍の手に負えなくて、半ば捨てられてた機体』
それは私みたいな一般人が知らないわけだ。
「ねえ、あなたはどうしてアイリスを助けたいの?」
『――夢をみたんだ。外の世界で、君と話す夢を。アイリスはその話をよく聞いてくれて、目をキラキラさせて』
なにそれ、ほんとアイリスらしい。
そっか、アイリスはずっとあんな感じなんだ。
『だから、アイリスに本当の世界を見せてあげたかった。それに、アイリスが外の世界を夢みたのは私のせいだから』
「せい、って。アイリスはあなたのおかげで夢を持てたんでしょ?」
『そう。だけど、アイリスが心を持ったのもそれがきっかけ。そのせいでアイリスは廃棄されてしまう。だから、責任がある』
「そっか。じゃあその責任、半分背負わせてよ」
―Do the Android Dream of the Girl? Episode6 : The Beginning―
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