第7話


「こ、これは……」



最初に声を上げたのは、受付嬢のソフィーさんだった。



「で……どうだ? 勇者だったのか?」



「いえ……その……これは……」



ソフィーさんが、戸惑いながらもギルドカードをこちらに見せてきた。




『【冒険者名】リリス・ジャンヌ・セレベール

 【年齢】15歳

 【職業】ひよっこ勇者

 【スキル】勇者への道 リリスソード 腹減り

 【ステータス】剣C 体術D 魔法E…… 』




「……ひよっこ勇者……だと」



俺は、予想の斜め上の結果に困惑する。



すると、その横でレイナさんは――。



「ぷっ……はははははっ! ひよっこ勇者とは、こりゃたまげたな! 勇者じゃなくてひよっこ勇者とは、こりゃー、今年一面白い! ひぃ、腹がよじれる」



「な、ななな、なに笑ってんのよぉ! ひ、ひよっこ勇者でも、勇者には変わりないじゃない! わたしは、いずれ悪しき魔王を討伐する勇者様なんだからあぁぁぁぁーっ!!」



「ひ、ひひひぃー! これは、これは勇者様失礼した! ご無礼をー……。あーっ、ダメだ。腹が痛い! し、死ぬーっ! は、はははっ!おい、ソフィー! つ、次はそこのボウズを鑑定してやれ! ふひぃー! そいつも、この……。ゆ、勇者様の御一行なんだろ? あぁー死んじまうぞ。ふーふー」



「は、はい! では、こちらにどうぞー」



促されるまま、今度は俺が水晶の上に手を乗せる。



きたぞ!



ついに来た!



これから本当の冒険の始まりだ。



この最初のイベントフラグこそ、ゲームとかで一番大切なシーン。



ここで俺の隠された潜在能力が披露され、直々に王様からお呼び出しがかかったりするわけだ。



職業はなんだ?



パラディンか?



いや大賢者でもいい!



どうせなら、魔法職で最強を目指すのも悪くない。



そんなことを考えていると、眩く光っていた水晶が、さらに強く輝きだした。



「な、なに!? どうしたの!?」



「なんだ? この凄まじい光は」



「こ、故障でしょうか?」



光はあまりに強烈で、目を開けていられない。



「はじまる! はじまるぞー! 俺の……夢の! 異世界生活がああぁぁぁぁーっ!!」



俺の叫びは光と共にかき消され――。



やがて光が収まり、ソフィーさんがギルドカードを手に取る。



「こ、これは!!」



ああ……その顔、カードを見なくても分かる。



やはり俺は、引き当ててしまったようだ。



職業ガチャの、SSR(スーパースペシャルレア)とやらを!!



「ソフィー! どうしたんだ!? 見せてみろ! なっ! こ、これは……」



「ま、まってー! わたしも見たい! え、うそ……なにこれ……」



あー、わかるわかる。みんな、そんな感じになるよな。



これぞファンタジー世界の王道。



さて……じゃあ俺もそろそろ、ギルドカードを見るとしますかね。




『【冒険者名】タナカ・ハルト

 【年齢】16歳

 【職業】自宅警備員

 【スキル】不明

 【ステータス】剣F 体術F 魔法F…… 』




「……じ、自宅……警備員……だと……」



一瞬、辺りは静まり返り。



「ぷっ、くすくす……職業はともかくとして。全ステータスがEだなんて! あはははっ! は、ハルト今までどうやって生きてたわけー? あー、やっぱりダメ! 笑いを堪えきれないっ!ひっひひぃー! お腹がー!」



「お、お前らなー! ホントにどこまで、わ、わたしを笑わせれば……は、はははははっ! お、お前、このステータスは……や、やばいぞ! そ、そこらの赤子の方が。ふひぃひひ、た、高いんじゃないのか?」



「こ、これは十年に一度……いえ、もしかしたら100年に一度の出来事かもしれませんね……。こほん、こほん」



ソフィーさんですら、笑いを堪えきれていない。



終わった……。



俺の輝かしき冒険者ライフは、開始早々、幕を閉じた。



っていうか、職業「自宅警備員」ってなんだよ。



この世界、前世の職業(ひきこもり)まで受け継ぐのかよ!



こうして俺の冒険者人生は始まった。



職業『自宅警備員』として、この異世界を生きていく。



そう……これは、『残念な引きこもり』と『残念な勇者』。



そして、この先で仲間になる『残念な面々』による、『残念』なお話しなのである。




つづくッ!

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