第6話


「あ、あんたが……ぎ、ギルマスね……わたしは……勇者リリス。そ、そこのハルトがあんたにとーっても大切な用事があ、あぁぁるらしいわよ!」



あ、こいつ、自分より強い奴がいたらビビって身内を売るタイプだ。



仕方ねーな。



ここは一つ、元引き込もり流の交渉術とやらを見せてやるか!




「すいませんしたあああああああぁぁぁぁーっ!! いやーうちの自称勇者が、ホントにホントにご迷惑をおかけしたみたいでー。えーホントに、俺も妄想は夢の中だけにしとけよっていつも言ってるんですが。どうも、最近は夢と現実の区別がつかない様でしてーはい。死んだ母もこの子はホントに変わった子だから、目を離しちゃいけないよって。それは、それは何回も何回も言われましてーはい。……っていう事なので、今回はこれでー。おい、リリス! 行くぞっ!」



「ちょ……ちょっとー! だから、なんで毎回謝るのよ! てか、離しなさいよー!」



俺はリリスの腕を掴んで引きずる。



「……いいか、リリス。世の中には生き方ってもんがあるんだ。死に急ぐことはねぇ。これは……いわゆる、戦略的撤退って言うヤツだ」



「……戦略的……てったい?」



リリスにしか聞こえない声で囁く。



悪いが、相手が強すぎた。



逃げるが勝ちだ、逃げるが――。



「……待ちな! 今、勇者って言ったか?」



レイナの低い声が背中に刺さる。



……あ、終わった。



「そ、そうよ! わたしは代々、数多の勇者を排出してきた家系の出身よ! この間、夢で創造神イチノセ様の天命を受けて旅だったばかり! だけど、道中でお金は落としちゃうし、剣は……ちゃうし……で、大変なのよ! けど、最近勇者詐欺が横行してるのか知らないけど! あ、あたしは、紛れも無くホントに本物の勇者なんだからっ!!」



「……神に誓ってか?」



「ち、誓ってよ!」



「…………」



「…………」



はい、終了ー。



皆さん今までお世話になりました。



「勇者詐欺」が横行してるってことは、相応の刑罰があるんだろ?



良くて投獄、悪くて市中引き回し。一番最悪な刑は、恐ろしくて考えたくもない。



「ふっ……。ふははははははっ! よし、よし良いだろ! わたしの闘気を前にしても言えるとは、ホントに勇者なんだろうな! よし、ソフィーあれを持ってこい!」



レイナに言われ、ソフィーさんが水晶のようなものを持ってきた。



「さっきから、魔法投影のモニターで見ていたがお前達は冒険者登録がしたいんだろ? いいか、よく聞け? この水晶みたいな形をしたやつが、いわゆるステータスの鑑定器具だ。名前は……忘れた。まぁ、使えりゃあなんだっていいだろ? で、こっちのカードがいわゆるギルドカードだ。ステータスや冒険者ランクを書き込んだり、後は関所を通過する時の通行手形の変わりにもなる。冒険者にとっては必需品だな。ここまではいいか?」



「はいっ!!」



返事をしないリリスの代わりに即答する。



訓練された犬の気持ちって、きっとこんな感じなんだろう。



「よし、いい返事だ! 後は、この水晶見たいなヤツに手をかざしてやれば自動的にステータスを判別してギルドカードに書き込んでくれる。じゃあ、そうだな……。勇者! 先ずはお前からやれ!」



促され、リリスが水晶の前へ進み、手をかざす。

水晶が淡く光りだした。



「ち、ちなみになんですが……ギルマス!」



「あん? なんだ? レイナでいいぞ! ギルマスって呼ばれるのは、なんていうか……慣れてないんだ」



「えっとー……じゃあ、レイナさん! ちなみに……なんですけど……。もし、もしですよ? リリスの鑑定結果が勇者じゃ……なかったら……」



「あん? そうだなー……。本来なら笑って済ませてやる所なんだが。今は国の法律が厳しくなってなー。勇者偽装罪は良くて終身刑。運が悪くてチョンパだな」



「……チョンパと……言いますと?」



「……これだ」



レイナさんは自分の首の前で親指を逆さに立て、横にスライドさせた。



「……ちょっと、お花をつみに……」



「おっ、鑑定が終わったようだな」



終わったのはお手洗いじゃなくて俺の人生ですよ。



はい。

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