第三章

それから、彼と頻繁に会うようになった。

不思議なことに、いつもどちらかが絵を描いている場面で出会う。

声をかけるのは、決まって私からだった。


その頃、私への評価はうなぎ登りだった。

「天才」と呼ばれ、さまざまなジャンルの絵も描けるようになった。


一方、彼の画力は変わらなかった。

ただ、楽しそうに描き続けていた。


ある日、我慢できずに聞いた。


「上手くなろうとは思わないのか?」


「結構です」


即答だった。

私は次第に、彼を幼稚だと感じるようになり、距離を置き始めた。


それでも、会う頻度はなぜか増えた。


そしてある日、初めて彼の方から声をかけてきた。


「僕のこと、避けてますよね?」


「そんなことはない」


「ふふ……残念ですけど、分かるんですよ」


その語気と視線に、私はたじろいだ。


「きっと、離れられません」


「僕は、あなたなんですから」



その日から私は、逃げるように交友関係を広げた。

彼を忘れるために。

壁の賞状もすべて外し、新しいスタートを切るために。


その結果、彼を見ることはなくなった。

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