第23話 毒親誕生秘話

童貞卒業を、目論む高校デビュー、だったはずだった。


しかし、高校受験は失敗した。滑り止めとして受けた私立の商業高校に、そのまま通うことになった。校舎は新しくも古くもなく、どこにでもありそうな匂いがした。入学してすぐ、どいつもこいつも馬鹿ばかりだと感じた。会話は軽く、声は無駄に大きく、考えが途中で止まっていた。


授業も同じだった。先生は、馬鹿馬鹿しいことばかりを教えた。簿記や資格の話は繰り返されたが、それが人生の何に役に立つのかは説明されなかった。説明しないことが前提のようだった。私はノートを取りながら、時間だけが一人で進んでいく感覚を覚えていた。教室に座っているのに、どこにも属していない気がした。


中学校で女性恐怖症になっていた私にとって、私立の商業高校は女性が多すぎた。廊下でも教室でも、常に声があった。視線があるような気がして、居場所がなかった。逃げ場はトイレか図書室くらいだったが、どちらも長居できる場所ではなかった。そういう環境を勧めてきたのが、他でもない親だった。


私は作家志望だったので、普通科の高校に行きたかった。理由はそれだけだった。だが、市外の高校になるからという理由で、あっさり却下された。通学が大変だから、金がかかるから、危ないから、と理由はその都度変わった。私は反論したが、反論はいつも途中で終わった。結論は最初から決まっていた。


両親からは、形だけの謝罪があった。申し訳なさそうな顔はするが、内容は変わらない。高校三年間で、一日に一回もない程度だった。謝罪はあるが、訂正はなかった。私はそれを記憶として溜めていったが、使い道はなかった。ただ溜まっていくだけだった。


それでも、私は心機一転して大学に行くことにした。理由は単純で、ここから抜け出したかったからだ。両親は、毒親のくせに妙に嬉しそうにしていた。その様子が、余計に不愉快だった。私はその不愉快さを、そのまま受験勉強に向けた。勉強に身が入ったというより、他に向ける先がなかった。


高三の一月末、合格通知が届いた。Fラン大学だった。封筒は薄く、文字も控えめだった。だが、それは人生で最初で、かつ唯一獲得した勲章だった。私はそれで満足していた。少なくとも、その時点では十分だった。


ところが、両親は別の反応をした。受験料がもったいないし、せめて受けるだけ受けたらどうだと、他の大学の受験を勧めてきた。私は本気で怒り狂った。もう勉強に疲れていたし、気力も残っていなかった。ここまで来て、まだ消耗させるのかと思った。


これだから、高卒で働いて、くっついて、デキ婚した毒親は駄目なんだと、心の底から痛感した。言葉にはしなかったが、感情ははっきりしていた。理解されない前提で、生き方を決められてきたことが、ようやく一つの形になった気がした。


そうして私は、母親と一緒に下宿を探しに行った。不愉快だったが、他に選択肢はなかった。街を歩き、部屋を見て、条件を聞いた。母親は隣で相槌を打ち、私はそれを聞き流した。その時間は、新しい始まりというより、別の場所へ移動するだけの作業だった。それでも、家を出るという事実だけは、確かにそこにあった。

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