第14話 保守思想とは

保守という言葉を、私はよく使う。壊さないこと。急がないこと。積み上げてきたものを尊重すること。配信では、そういう順番で話す。順番があるという事実が、安心につながるからだ。


だが、自分の生活を見渡すと、守られているものが見当たらない。給料は固定されていない。入金日は毎月違う顔をしてやってくる。返済日は正確だ。利息は、こちらの思想に関係なく増える。


口座の残高を確認する。数字は小さく、だがゼロではない。ゼロでないことを、私は何度も強調してきた。だが、ゼロでないことは、守れていることと同義ではない。耐えているだけだ。


社会的な立場も、保守できていない。正規雇用の履歴はない。肩書きは曖昧で、説明に時間がかかる。時間をかけて説明したところで、理解される保証はない。理解されないことに、慣れているふりをしている。


人間関係も、維持ではなく延命だ。切れてはいないが、太くもならない。連絡頻度は落ち、話題は減る。減ったことを問題視しない態度が、大人だと思われることもある。その誤解に、少し助けられている。


将来について考えるとき、私はいつも抽象に逃げる。思想、態度、構造。具体的な年数や金額を入れると、話が終わってしまうからだ。終わらせないことが、思考の目的になっている。


自費出版の本は、棚に並んでいる。埃はかぶっていない。たまに手に取る。重さは一定だ。だが、その重さが生活を支えたことはない。支える可能性については、何度も語ってきた。


保守とは、継続だと言う。だが、継続するための基盤がない。基盤がないまま、姿勢だけを保とうとしている。姿勢は、見た目を整える。内側が崩れていても、しばらくは立っていられる。


彼女との関係も、維持ではない。破綻していないだけだ。破綻していないことを、成功だと呼ぶには無理がある。だが、失敗だと呼ぶ勇気もない。どちらにも分類できない状態が、一番長く続く。


私は保守思想を語りながら、保守されていない生活を送っている。矛盾はある。だが、その矛盾を直ちに解消すべきだとは思っていない。矛盾は、急に触ると崩れる。


守るべきものが何か分からないまま、守る姿勢だけが残っている。姿勢は、疲れる。だが、崩れるよりは楽だ。少なくとも、今は。


部屋を見回す。変わらない配置。安い家具。使い続けている物。新しいものは増えない。減りもしない。停滞は、保守に似ている。似ているが、同じではない。


保守とは、本来、守れている人間が選ぶ態度だ。そういう考えが、ふと浮かぶ。私はその考えを、すぐに押し戻す。押し戻すことで、今日の生活は続く。


スマートフォンを見る。通知はない。口座も、関係も、立場も、すべてそのままだ。私はそれを、現状維持だと呼ぶことにした。その呼び方が、正しいかどうかは、まだ問わない。


保守思想とは、もしかすると、壊れていないふりをする技術なのかもしれない。そう考えて、私はその考えも、そっと棚に戻した。今は、守れるものがないまま、守る話を続けるしかなかった。

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